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うき世のたわむれ:笑いつづける浮世絵と幕末明治の渦

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2 日前
読了時間: 7分

会期:2026年9月12日[土]~11月23日[月・祝]

   前期:9月12日[土]〜10月12日[月・祝]

   後期:10月15日[木]〜11月23日[月・祝]

   ※展示替えがあります

開館時間:平日10:00~17:00 土・日・祝日10:00~17:30 ※入場は閉館30分前まで

休館日:月曜日

    ただし9月21日[月・祝]、10月12日[月・祝]、11月23日[月・祝]は開館し、

    9月24日[木]、10月13日[火]は休館。10月14日[水]は展示替えのため閉室。


会場:町田市立国際版画美術館 企画展示室1、2 ※巡回なし




笑って、驚いて、読み解く―浮世絵に見る人々と激動の時代


 浮世絵と聞いて、まず何を思い浮かべるだろうか。美しい風景、華やかな役者や美人、あるいは歌川広重や歌川国芳といった名だたる絵師の名前かもしれない。

 しかし、浮世絵の魅力は、名所や有名人を描いた華やかな作品だけにあるのではない。画面の片隅にいる人物の表情やしぐさ、思わず笑ってしまうような場面、そして一見すると何気ないモチーフの中に、当時の人々の暮らしや感情、さらには社会の変化までが巧みに描き込まれている。


喜多川歌麿《吉原の花》 大吉原展 Web美庵

《どきやうのはらの上 あわてといふ手》 文久3年(1863)、大判錦絵二枚続、当館蔵【後期展示】


 全6章で構成される本展では、江戸から明治へと移り変わる激動の時代を、浮世絵師たちがどのように捉え、描いたのかをたどる。キーワードとなるのは、「笑い」「風刺」「ニュース」。作品を少し違った角度から眺めることで、浮世絵がぐっと身近なものに感じられるはずだ。

 第1章は「歌川広重の名所絵、戯画」。風景画の巨匠・歌川広重を紹介する。広重といえば《東海道五十三次》。朝の澄んだ空気、夕暮れの光、雨に煙る街道……。広重は、風景が醸し出す情緒を巧みに描き出した。ところが、そんな美しい風景の中に目を凝らしてみると、実にユーモラスな人々が登場する。

 《東海道五十三次 日本橋朝の景》では、出発したばかりの大名行列と、朝から魚を仕入れに向かう商人たちが描かれている。緊張した面持ちの武士たちに対して、商人たちはどこか眠そう。ひとつの画面の中に、それぞれの立場や生活の違いが表情豊かに描かれている。


喜多川歌麿《吉原の花》 大吉原展 Web美庵

歌川広重《東海道五拾三次之内 御油 旅人留女》 天保4-6年(1833-35)頃、横大判錦絵、当館蔵【前期展示】


 さらに有名なのが《御油》。旅籠の客引き(通称 留女、とめおんな)たちが、旅人の着物をつかんで「うちに泊まって!」と激しく引っ張り合う、なんとも賑やかな一場面。

 一方、《庄野》では突然の激しい雨に人々が逃げるように街道を駆けています。顔がほとんど見えないからこそ、「困っているのだろうか、それとも雨を楽しんでいるのだろうか」と想像が膨らむ。


喜多川歌麿《納涼美人図》 大吉原展 Web美庵

歌川広重《即興かげぼし尽し 入ふね 茶わんちや台》 天保年間(1830-44)後期頃、大判錦絵

羽生次郎氏寄託(羽生雅則氏旧蔵)【後期展示】


 風景画の巨匠・広重は、実は戯画も多く手がけた。《即興かげぼしづくし》に描かれるのは、影絵遊びに興じる人々。立ち姿やポーズを工夫し、別のものに見せようとする姿には、広重の意外な一面が表れている。

 第2章「歌川国芳の戯画、風刺画」では、広重とほぼ同時代に活躍した歌川国芳に焦点を当てる。武者絵だけでなく、戯画や風刺画で人気を博した国芳。その作品には、単なる「面白さ」を超えた、時代を読み解く仕掛けが隠されている。


歌川国貞《美人合 俄》 大吉原展 Web美庵

歌川国芳《みかけハこハゐがとんだいゝ人だ》 弘化4年(1847)頃、大判錦絵、当館蔵【前期展示】


 代表作の一つ《みかけハこハゐがとんだいゝ人だ》では、大勢の人物が組み合わさり、一人の大きな顔を形作っている。遠目には一人の人物に見えても、近づくとそこには多くの人間がいる。その驚きと遊び心こそ、国芳作品の醍醐味だ。

 さらに国芳は、幕府による規制の中でも、知恵とユーモアを駆使して作品を生み出した。《流行逢津絵希代稀物》では、大津絵のキャラクターを使いながら、当時人気の歌舞伎役者を連想させる人物を描くなど、表向きとは異なる意味を作品に忍ばせている。作品を「見る」だけでなく「読む」ことで、当時の人々が絵をどのように楽しんでいたのかが見えてくるだろう。


酒井抱一《大文字屋市兵衛像》 大吉原展 Web美庵

歌川芳盛《流行麻疹退散の図》 文久2年(1862)、大判錦絵、当館蔵【前期展示】


 第3章「鯰絵、麻疹絵」では、地震や疫病という災害を題材とした浮世絵を取り上げる。安政の大地震を引き起こす存在として描かれた鯰を通して、被災した人々や、災害によって仕事が増えた人々など、それぞれ異なる立場から地震を捉えている。

 疫病を題材とした麻疹絵にも、当時の人々の不安と知恵が表れている。医学が十分に発達していなかった時代、さまざまな呪術的な方法が信じられていた。やがて流行が収束すると、麻疹そのものを小さな鬼の姿に擬人化する(《麻疹心得之図画》《麻疹養生之おしへ》)など、ユーモラスな表現も登場する。災害や疫病という深刻な出来事さえも、浮世絵師たちは人々の目線から描き出していたのだ。


辻村寿三郎 大吉原展 Web美庵

《子供遊豆鉄砲の合戦のづ》 慶応4年(1868)、大判錦絵二枚続、当館蔵【前期展示】


 第4章「軍上洛もの、あわて絵、合戦絵、子供遊びもの」では、幕末から戊辰戦争へ、将軍の上洛、外国との緊張、江戸の人々の動揺、そして戦争へと、社会が大きく揺れ動く様を浮世絵でたどる。興味深いのは、当時の浮世絵がこうした出来事を直接的に描くだけではなかったことだ。

 戦う藩を「芋」や「蛸」に置き換えたり(《狂画 芋たこ合戦のづ》)、子どもたちの遊びとして表現したりする(《子供遊豆鉄砲の合戦のづ》)ことで、複雑な政治情勢を巧みに伝えました。子どもたちが豆鉄砲を撃ち合う作品をよく見ると、仙台藩、会津藩、薩摩藩、長州藩などを示す手がかりが隠されている。まるで絵の中に仕掛けられた謎解きです。


辻村寿三郎 大吉原展 Web美庵

昇斎一景《東京名所三十六戯撰 さる若町》 明治5年(1872)、大判錦絵、当館蔵【後期展示】


 第5章では、明治時代の「開化絵」を紹介する。江戸から東京へ。人々の目の前に、人力車や写真、サーカスなど、それまで見たことのなかった新しい文化が次々と現れる。

 しかし、新しいものが登場したからといって、人間そのものが急に変わるわけではない。最先端の人力車をめぐって無賃乗車をする人が描かれたり(《浅草並木人力車の賑ひ》)、新しい文明をうまく扱えず右往左往する人々が描かれたり(《東京名所三十六戯撰 開運はし》)。そこには、急速に変化する社会と、変わらない人間の姿との面白い対比がある。


辻村寿三郎 大吉原展 Web美庵

月岡芳年《西郷隆盛一代期》明治10年(1877)、大判錦絵三枚続、当館蔵【前期展示】


 そして第6章「錦絵新聞、西南戦争錦絵、そして小林清親の風刺画へ」では、浮世絵と近代ジャーナリズムとの結びつきを見ていく。新聞が普及すると、実際に起こった事件や社会のニュースが浮世絵の題材となる。

 西南戦争を描いた錦絵では、西郷隆盛が英雄的な姿で描かれるなど、現代のニュースとは異なる、想像や脚色を含んだ「ニュースの絵」が生み出された。


辻村寿三郎 大吉原展 Web美庵

小林清親《清親放痴 東京隅田川牛嶌》 明治14年(1881)頃、大判錦絵、当館蔵【後期展示】


 そして最後に登場する小林清親の戯画も見逃せない。国芳から受け継いだユーモアに、西洋のカリカチュアの影響を加え、社会や人々を少し離れたところから眺めるような作品を生み出した。


 本展を楽しむポイントは、作品を遠くから眺めるだけで終わらせないことだ。「この人は何をしている?」「なぜこんな表情をしている?」「この小さな模様にはどんな意味がある?」――そんな疑問を持って、ぜひ作品に近づいてみてほしい。

 美しい風景の中の眠そうな商人、雨から逃げる人々、奇妙なポーズを取る男たち、災害に怒る人々、新しい文明に戸惑う人々、そして社会を風刺する人物たち。そこにいるのは、遠い昔の「歴史上の人々」ではない。笑い、困り、驚き、怒り、ときにはしたたかに世の中を生き抜こうとした、私たちと同じ一人ひとりの人間だ。

 浮世絵を「美術」として見るだけでなく、「人間」と「社会」を映す鏡として見る。6つの章をめぐるうちに、江戸から明治へと移り変わる時代の息遣いが、きっと生き生きと感じられることだろう。




【観覧料】

一般 1000(800)円 大・高生 500(400)円

※中学生以下無料

※( )は20名以上の団体料金

※展覧会初日・9月12日(土)、文化の日・11月3日(火)は入場無料

※9月23日(水)、10月28日(水)は、65歳以上の方が無料でご観覧いただけるシルバーデー

※身体障がい者手帳、愛の手帳(療育手帳)または精神障がい者福祉手帳をお持ちの方と付き添いの方1名は半額

リピーター割引 一律:200円引

※観覧券売場で本展の半券をご提示ください。


招待券プレゼント
企画展「うき世のたわむれ:笑いつづける浮世絵と幕末明治の渦」の招待券を、5組10名様にプレゼントいたします。 読者アンケート「本展で見たい3作品」を添えて、Web美庵編集部(LDQ03330@nifty.com)宛、メールにてご応募ください。なお、当選は発送をもって代えさせていただきます。

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