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水滸伝

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9月28日
読了時間: 7分

会期:2026年9月19日[土]~11月8日[日]

開館時間:10:00 〜 18:00 (入館は閉館30分前まで)

毎週金曜日は20:00まで開館

休館日:月曜日(ただし10月12日、11月2日は開館)、10月13日[火]


会場:東京ステーションギャラリー

展覧会公式サイト:https://www.ejrcf.or.jp/gallery/

展覧会公式X/Instagram:@tokyostationgallery



108人の豪傑が駆け抜ける――中国から江戸、そして現代へ。

知られざる「水滸伝」の魅力に出会う


 中国四大奇書の一つとして知られる『水滸伝』。宋代末期を舞台に、梁山泊に集う108人の豪傑たちが繰り広げる波瀾万丈の物語は、長く中国で親しまれてきただけでなく、日本にも伝わり、江戸時代の文学や浮世絵に大きな影響を与えた。さらにそのイメージは、近代以降の小説、漫画、アニメ、ゲームなどにも受け継がれている。

 この「水滸伝」展は、そんな壮大な物語の魅力を入り口にしながら、実はもう一つの大きな見どころを秘めている。それは、中国美術史の一つの頂点ともいえる北宋美術の名品をはじめ、中国絵画、陶磁器、版本、拓本、そして江戸時代の浮世絵まで、多彩な作品を通して「水滸伝」が生まれ、広がり、姿を変えながら現代へ受け継がれてきた歴史をたどることだ。


歌川国芳《通俗水滸伝豪傑百八人之一人 花和尚魯知深初名魯達》、江戸時代(19世紀)、個人蔵


 会場は全5章で構成されている。

 第1章「梁山泊へようこそ」でまず来場者を迎えるのは、歌川国芳の《通俗水滸伝豪傑百八人之一個(壱人)[つうぞくすいこでんごうけつひゃくはちにんのひとり]》シリーズ。全74図を一堂に見ることができる、圧巻の空間だ。国芳が描き出した豪傑たちは、激しい戦いの場面や奇想天外な姿、強烈な個性をまといながら画面から飛び出してくるかのよう。しかも今回は摺りの状態が極めて良い作品がそろい、一点一点の細やかな表現までじっくり楽しめる。「水滸伝を知らない」という人にも、まずはその迫力と面白さから入ってもらえるよう工夫された、展覧会の扉ともいえる章だ。


仇英(款)《九成宮図》(部分)、明時代(16世紀)、大阪市立美術館(阿部コレクション)

【会期中場面替えあり】


 続く第2章「豪傑たちの生きた時代」では、舞台となる北宋時代へと時間をさかのぼる。ここが本展の核心の一つ。水滸伝そのものはフィクションだが、その舞台設定には北宋末期の社会や文化が重なっている。大阪市立美術館が誇る阿部コレクションを中心に、北宋美術、さらに明時代の人々が描いた北宋の都・開封[かいほう]のイメージなど、中国美術の名品が並ぶ。


重要文化財 趙浙《清明上河図》(部分)、明時代・万暦5年(1577)、林原美術館【会期中場面替えあり】

 なかでも注目したいのが、北宋の都・開封の賑わいを描いた重要文化財《清明上河図[せいめいじょうがず]》。東京会場では前期と後期で展示場面を替えることで、通期でその魅力に触れることができる。


《青磁 水仙盆》汝窯、北宋時代(11世紀末~12世紀初)、

大阪市立東洋陶磁美術館(住友グループ寄贈/安宅コレクション)、写真:六田知弘


 また、世界的にも希少な汝窯[じょよう]の青磁《青磁 水仙盆》など、息をのむような美しさを持つ陶磁器も見逃せない。東京ステーションギャラリーでは作品とガラスケースとの距離が近く、繊細な筆線や器の質感など、細部まで迫って鑑賞できるのも大きな魅力だ。


重要文化財 米芾《草書帖》、北宋時代・紹聖4年(1097)~元符2年(1099)、

大阪市立美術館(武居巧氏寄贈)【展示期間:10/3~10/25】


 第3章「武侠小説・水滸伝の誕生と流行」では、『水滸伝』という物語そのものがどのように成立し、書物として広がっていったのかを探る。版本や関連資料を通して、物語が生まれるまでの背景や思想に迫る、いわば「水滸伝の成り立ち」を知るための章。東京大学アジア研究図書館らの協力による貴重な版本も登場する。

 注目は、美麗な挿画を備えた120回本の『忠義水滸全伝[ちゅうぎすいこぜんでん]』(明時代末)、パラレルワールド的世界を描く『新刻繍像批評金瓶梅[しんこくしゅうぞうひひょうきんぺいばい]』(明時代末)。さらに中国で描かれた水滸伝群像を日本の絵師が模写した作品なども展示される。

 一見すると文字の多い古書に見えるかもしれない。しかし、少し目を凝らせば、現代の中国語にも通じる口語的な表現が見えてくる。漢文の知識がある人なら、「これは読めそうだ」と感じる箇所もあるはず。物語を読むだけでは見えてこない、『水滸伝』が「本」になっていく過程そのものも、本展ならではの楽しみだ。


『忠義水滸全伝』、明時代末(17世紀)、東京大学東洋文化研究所【会期中ページ替えあり】


 そして第4章「拡張する英雄像」では、海を越えて日本へ渡った『水滸伝』が、江戸時代にどのような熱狂を生んだのかを紹介する。曲亭馬琴や葛飾北斎らの作品を通して、中国の物語が日本の想像力によって再解釈されていく様子が浮かび上がる。

 ここで特に注目したいのが北斎の版本『新編水滸画伝 初編』。巻之六を除く諸巻は初摺に近いと考えられる非常に貴重なもので、細く繊細な線の美しさは、同じ版本でも摺りによってこれほど違うのかと驚かされる。そしてもちろん、国芳の豪快な表現も見どころ。中国から伝わった物語が、江戸の日本人の美意識や遊び心を通して、新たな生命を得ていく過程を堪能できる。


曲亭馬琴作・葛飾北斎画『新編水滸画伝』初編 巻之十、江戸時代・文化4年(1807)刊、浦上蒼穹堂


歌川国芳《狂画水滸伝豪傑一百八人 十番続之内壱》、江戸時代・文政10年(1827)頃、個人蔵


 最終第5章「忠義のゆくえ」では、『水滸伝』が現代の私たちにどうつながっているのかを見つめる。白髪一雄による大作や、現代アーティスト・小林勇輝のパフォーマンス作品など、時代を超えて広がる「水滸伝」のイメージを紹介。さらにWOWOWのドラマ「北方謙三 水滸伝」で実際に使用された衣装も展示される。古代中国の歴史から物語の成立、江戸の浮世絵、現代美術、そして映像作品へ――展示室を歩くことで、時間を飛び越えるような感覚を味わえる構成となっている。


卍斎田蝶《水滸伝浪切張順刺子半纏》 、江戸時代(19世紀)、其角堂コレクション


 まずは、108人もの豪傑をすべて覚えて展覧会に臨む必要はない。けれども、少しだけでも登場人物を知っておくと、作品を見る楽しさはぐっと広がる。虎といえば武松[ぶしょう]、九つの龍の刺青を持つ若者なら九紋龍史進[くもんりゅうししん]、弓の名手・花栄[かえい]、そして豪快な魯智深[ろちしん]。女性の豪傑・扈三娘[こさんじょう]にも注目だ。国芳の74図から「自分の推し」を探してみるのも、この展覧会ならではの楽しみ方だろう。

 『水滸伝』は、仲間、友情、反骨、武勇、義といった、現代の私たちが「カッコいい」と感じる要素を数多く備えている。そのイメージは『南総里見八犬伝』など日本の物語にも影響を与え、さらに遠く現代の漫画やアニメ、ゲームへとつながっていると考えられる。だからこそ、物語を詳しく知らなくても、どこか懐かしく、どこか見覚えのある魅力を感じるのかもしれない。


歌川国芳《通俗水滸伝豪傑百八人之一個 九紋龍史進 跳澗虎陳達》、江戸時代(19世紀)、個人蔵


 そして、この展覧会を特別なものにしているのが、東京ステーションギャラリーの空間だ。歴史を刻んだレンガ壁と六角形の展示室が、豪傑たちの物語と呼応し、作品世界への没入感を高める。中国から日本へ、古代から江戸へ、そして現代へ。異なる時代と地域の作品が、水滸伝という一つの物語を軸に結びついていく。

 中国美術の名品を楽しむ展覧会であり、江戸の浮世絵を楽しむ展覧会であり、古書の世界に触れる展覧会でもある。そして何より、千年近い時間を越えて人々の想像力を刺激し続けてきた「物語」の力に出会う展覧会。

 水滸伝を知っている人には、新たな発見を。知らない人には、思いがけない入口を。まずは一人の豪傑を見つけるところから、この壮大な物語の世界に足を踏み入れてみてはいかがだろう。



【観覧料】

一般 1,600円

高校・大学生 1,100円


※中学生以下無料

※障がい者手帳等持参の方は、一般1,100円、高校・大学生900円[ともに介添者1名は無料]

※学生の方はご入館の際、生徒手帳・学生証をご提示ください


【チケット販売場所】

※東京ステーションギャラリー1階入口

※事前にオンラインチケットをご購入いただくと入館がスムーズです

※サービス券や会員証のご提示で割引をご希望の方は、美術館でチケットをご購入ください。

 ただし混雑時は入館をお待ちいただく場合があります


無料観覧券プレゼント
読者アンケート「"水滸伝"について知っていること」を添えてWeb美庵編集部宛、メールにてご応募ください(LDQ03330@nifty.com)。抽選で5組10名様に無料観覧券をプレゼントいたします。なお、当選は発送をもって代えさせていただきます。

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