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特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」

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  • 4月24日
  • 読了時間: 7分

会期:2025年4月22日[火]~ 6月15日[日]

前期:4月22日[水]~5月18日[月・休]

後期:5月20日[水]~ 6月15日[日]

開館時間:9時30分~17時00分 (入館は閉館の30分前まで)

毎週金・土曜日、5月4日[日・祝]、5日[月・祝]は午後8時まで開館

休館日:月曜日、5月7日[水]

※ただし、4月28日[月]、5月5日[月・祝]は開館


会場:東京国立博物館 平成館

展覧会公式サイト:https://tsutaju2025.jp/

展覧会公式X @tohaku_edo2025

展覧会公式Instagram @tohaku_edo2025



歌麿や写楽を世に出した出版業者・蔦屋重三郎の多岐にわたる活動を、

約250点の作品と、吉原中之町通りと日本橋の世界観を再現した空間で堪能!!


 江戸時代の傑出した出版業者である蔦重こと蔦屋重三郎(1750〜97)は、喜多川歌麿や東洲斎写楽などを世に出し、天明(1781〜1789年)・寛政期(1789~1801年)の江戸文化を牽引した人物だ。

 彼は遊郭や歌舞伎、狂歌などと関わりながら、多様な人々とのネットワークを活かして出版業界に革新をもたらした。そして、卓越した商才と消費者目線を活かし、面白さを追求しながらコンテンツ・ビジネスを革新し続けた。

 本展では、蔦重の多岐にわたる出版活動を、約250点の作品を通じて紹介する。


『箱入娘面屋人魚』 山東京伝作 墨摺小本 寛政3年(1791)正月 東京国立博物館蔵

通期展示 ※会期中、頁替えを行います


 会場に入ってまず驚くのが、遊郭・吉原への唯一の入場口だった吉原大門だ。これは本展と連携している今年の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」(NHK)で実際に使用されたもの。この門をくぐると、吉原のメインストリート「仲之町」を模した展示室となる。

 会場は3章と附章で構成。第1章「吉原細見・洒落本・黄表紙の革新」では、吉原出身の蔦屋重三郎が『吉原細見』の出版から出版活動を開始し、その手腕を発揮して戯作の出版に乗り出し、黄表紙や洒落本で大衆を魅了、朋誠堂喜三二(ほうせいどう きさんじ)、恋川春町(こいかわ はるまち)、山東京伝(さんとう きょうでん)ら才子の傑作を世に送り出したその出版活動における革新に焦点を当てる。

 冒頭の図版は、江戸時代に流行した大人向けの絵入り小説「黄表紙」の一つ『箱入娘面屋人魚(はこいりむすめめんやにんぎょ)』。おとぎ話「浦島太郎」のその後を描いたユーモアたっぷりのパロディ作品だ。人気戯作者の山東京伝が本文を書き、序文には蔦重自身が登場して「まじめなる口上」を寄せている。京伝は寛政元年(1789年)に幕府から処罰され筆を折ろうとしたが、蔦重が強く頼んで執筆させたことが語られている。


「雛形若菜初模様 丁字屋内ひな鶴」 礒田湖龍斎筆 大判錦絵 安永4年(1775)頃 東京国立博物館蔵

前期展示:4/22~5/18


 「雛形若菜初模様(ひながたわかな の はつもよう ちょうじやうち ひなづる)」は、100点をこえる大シリーズで、明和期(1764〜1772年)から安永(1772〜1781年)、天明期に活躍した礒田湖龍斎(いそだ こりゅうさい)の代表作。「若菜初模様」は正月の着物の柄を、「雛形」は見本帖を意味し、禿二人を連れた各妓楼自慢の遊女を艶やかに描き出している。吉原に精通する駆け出しの蔦重は、この企画の制作過程で、遊女に関わる情報提供者として、大店の西村屋に登用された可能性がある。


『青楼美人合姿鏡』 北尾重政・勝川春章画 彩色摺大本 安永5年(1776)正月 東京国立博物館蔵

通期展示 ※会期中、頁替えを行います


 『青楼美人合姿鏡(せいろうびじんあわせすがたかがみ)』は、蔦重が企画・出版した絵本で、当代きっての人気浮世絵師・北尾重政(きたお しげまさ)と勝川春章(かつかわ しゅんしょう)が競作した。季節ごとに遊女たちが琴や書画、香合、すごろく、投扇興などの芸や遊びを楽しむ様子を描き出している。描かれた遊女や妓楼が出版費用を負担する“入銀物(にゅうぎんもの)”で、常連客への贈り物や宣伝目的で使われたと考えられる。


重要文化財「エレキテル」 平賀源内作 木製彩色江戸時代・18世紀 郵政博物館蔵

前期展示:4/22~5/18(後期は複製を展示)


 第2章「狂歌隆盛―蔦唐丸、文化人たちとの交流」では、天明期に流行した狂歌に蔦重が「蔦唐丸(つたの からまる)」として参加し、四方赤良(よもの あから=大田南畝)や唐衣橘洲(からごろも きっしゅう)、朱楽菅江(あけら かんこう)ら当代一流の文化人との交流を通じて、狂歌集、狂歌絵本を一手に刊行するプロデューサーとして商才を発揮し、江戸文化の発信源となった活動に焦点を当てる。

 平賀源内(ひらが げんない)はオランダから伝わった摩擦起電機・エレキテルを自作し、見世物や病気治療に活用した。彼は西洋技術を紹介した先駆者であり、発明家・学者・文筆家として多方面で活躍した。蔦重が初めて出版した『吉原細見』には序文を寄せている。


『画本虫撰』 宿屋飯盛撰/喜多川歌麿画 彩色摺大本天明8年(1788)正月 千葉市美術館蔵

前期展示:4/22~5/18(後期は別本を展示)


 『画本虫撰(えほんむしえらみ)』は、狂歌グループが詠んだ“虫”をテーマとする狂歌集に、喜多川歌麿(きたがわ うたまろ)が絵を添えた狂歌絵本。昆虫や小動物が季節の草花とともに描かれており、『潮干のつと』『百千鳥狂歌合』とともに三部作として知られる。いずれも歌麿の写実的で精緻な描写が際立っており、天明期におこった狂歌ブームの中で、蔦重はその卓越した才能に注目した。


「婦女人相十品 ポッピンを吹く娘」 喜多川歌麿筆 大判錦絵 寛政4~5年(1792~93)頃 東京国立博物館蔵

前期展示:4/22~5/18


 第3章「浮世絵師発掘―歌麿、写楽、栄松斎長喜」では、寛政期に蔦重が喜多川歌麿、東洲斎写楽(とうしゅうさい しゃらく)、栄松斎長喜(えいしょうさい ちょうき)といった浮世絵師を発掘し、彼らの魅力を最大限に引き出す企画・出版を行ったことに焦点を当てている。

 特に、人物の顔を大胆にクローズアップした「大首絵」の構図によって、歌麿は女性の心情を、写楽は歌舞伎役者の個性を描き出し、蔦重版の浮世絵は人物表現の到達点を示した。

 喜多川歌麿筆「婦女人相十品 ポッピンを吹く娘」では、雲母(キラ)で光る背景と市松模様の華やかな着物が、町娘の魅力を引き立てている。ポッピンというガラス細工のおもちゃを口にした町娘が、ふいに声をかけられてふり返る瞬間をとらえた一場面で、歌麿は「大首絵」の技法で、女性の表情やしぐさから心の動きまで巧みに表現している。


『歌まくら』(部分) 喜多川歌麿画 横大判錦絵折帖 天明8年(1788) 浦上蒼穹堂蔵

前期展示:4/22~5/18(後期は別本を展示)


 『歌まくら』は、蔦重が企画・出版したとされる春画本で、歌麿の代表作。12枚の横大判錦絵に、男女の駆け引きや修羅場など多彩な場面が描かれている。特に印象的なのは茶屋の二階での密かな恋の場面で、女性の表情は見えないものの、髪の下からのぞく男性の冷めた目が関係の微妙な変化を表している。


「大坂新町東ノ扇屋 花扇太夫」 栄松斎長喜筆 大判錦絵 寛政(1789~1801)中期頃 東京国立博物館蔵

後期展示:5/20~6/15


 栄松斎長喜は、歌麿が蔦屋を離れた後に蔦重が新たに起用した浮世絵師で、歌麿と同じく鳥山石燕(とりやま せきえん)に学んだ浮世絵師。歌麿の影響を受けつつも、主に京阪の芸妓を描き、特に細身で肩幅の狭い“こけし”のような女性像で、可憐さやたおやかさを表現した。蔦重は長喜を通じて、美人画の新たなスタイルを打ち出そうとしたのだ。


重要文化財「三代目大谷鬼次の江戸兵衛」 東洲斎写楽筆 大判錦絵 寛政6年(1794) 東京国立博物館蔵

前期展示:4/22~5/18


 寛政の改革で打撃を受けた蔦重は、役者の大首絵で巻き返しを図り、無名の新人・写楽を起用して寛政6年5月に一気に28枚を発表し、世間を驚かせた。写楽は黒雲母摺りの背景で暗い舞台を演出し、リアルに役者を描き出している。中でも『恋女房染分手綱(こいにょうぼうそめわけたづな)』を題材にした「三代目大谷鬼次の江戸兵衛」(重要文化財)では、金を奪おうとする江戸兵衛の殺気立った姿が印象的に描かれている。


 そして本展の最後を締めくくる附章「天明寛政、江戸の街」では、蔦重が日本橋の近くに構えた「耕書堂」に実際に暖簾をくぐって入ることができるほか、彼の活躍した江戸時代の街並みが再現され、来場者は当時の江戸にタイムスリップしたかのような体験をすることができる。

 江戸時代の出版業界を革新した蔦屋重三郎の足跡をたどり、彼が送り出した様々な作品を知る機会となる本展。この展覧会を通じて、江戸時代の文化の奥深さを感じ取ってみてはいかがだろうか。



観覧料:一般 2,100円、大学生 1,300円、高校生 900円

※中学生以下、障がい者および介護者1名は無料(入館時に学生証、障がい者手帳などを要提示)

※本展のチケットで会期中の観覧当日にかぎり、「浮世絵現代(表慶館、4月22日[火]~6月15日[日])、東博コレクション展(平常展)も観覧可


【問い合わせ先】

ハローダイヤル TEL:050-5541-8600


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