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幕末土佐の天才絵師 絵金

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  • 8月11日
  • 読了時間: 5分
会期:2025年9月10日[水]〜11月3日[月・祝]

 ※作品保護のため、会期中展示替を行います。

 前期:2025年9月10日~10月6日
 後期:2025年10月8日~11月3日月・祝
開館時間:10時~18時(金曜日は10時〜20時)
 ※11月1日[土]、2日[日]は20時まで開館

 ※9月26日[金]、27日[土]は六本木アートナイトのため21時まで開館

 ※いずれも入館は閉館の30分前まで

休館日:火曜日(9月23日、10月28日は18時まで開館)

会場:サントリー美術館


原在中・在明《春花図》 江戸時代・19世紀 泉屋博古館
伊達競阿国戯場 累 二曲一隻 香南市赤岡町本町二区 【通期展示】


狂おしい情念、闇夜に浮かぶ美──絵金

高知の夏祭りを彩る異色の絵師、東京の美術館初の大規模展


 土佐出身の絵師・金蔵(1812~1876)は、幕末から明治初期にかけて歌舞伎や浄瑠璃を題材にした芝居絵屏風を多数制作し、地元高知では「絵金さん」の愛称で長年親しまれてきた。絵金の屏風は、今なお夏祭りの間に神社や商店街の軒下に飾られ、提灯や蝋燭の灯りで浮かび上がる画面は、見る者に強い印象を残している。

 1966年の雑誌特集を機に再評価され、展覧会も開催されたものの、作品の多くは分散しており、一度に観られる機会は限られている。

 近年は作品を保存・研究・展示する環境が整い、2023年から巡回している本展は、高知県外では約50年ぶり、東京の美術館では初の大規模展となる。


原在中・在明《春花図》 江戸時代・19世紀 泉屋博古館
花衣いろは縁起 鷲の段 二曲一隻 香南市赤岡町本町二区 【通期展示】

 本展は3章構成となる。第1章は「絵金の芝居絵屏風」と題され、絵金の基準作として名高い、香南市赤岡町の4つの地区が所蔵する芝居絵屏風が展示される。これらの屏風は、毎年7月に行われる須留田八幡宮神祭および土佐赤岡絵金祭りでは商店街の軒下に飾られるものだ。

 2013年の報告書(絵金蔵運営委員会)によると、絵金の芝居絵屏風は約200点(その多くが二曲一隻)が高知県に現存し、多くは神社や自治会により管理され、夏祭りで使用されている。絵金没後も制作は続き、弟子たちの作品も含まれるため、画風には多様性が見られる。

 また、御用絵師であった絵金が残した、芝居絵屏風以外の掛軸や絵巻、大地震を題材にした画帖なども紹介し、その多才な画力を伝える。


村田香谷《花卉・文房花果図巻》(部分) 明治35年(1902) 泉屋博古館東京
浮世柄比翼稲妻 鈴ヶ森 二曲一隻 香南市赤岡町本町一区 【通期展示】

 第2章「高知の夏祭り」では、東京で高知の夏祭りの雰囲気を再現。絵馬提灯や《釜淵双級巴(かまがふちふたつどもえ)》といった貴重な作品を展示する。

 絵金の芝居絵屏風を神社の夏祭りに飾る風習は、安政5年(1858)頃から始まり、幕末に流行した。現在、約10か所の神社で屏風を絵馬台(台提灯)に飾る伝統的な祭りが行われているが、氏子の高齢化や屏風の劣化により、年々その数は減少している。

 高知市朝倉の朝倉神社では、夏祭りの際に山門型の絵馬台が6台組み上げられ、拝殿に向かって整列する様子は非常に壮観だ。

 香美市土佐山田町の八王子宮には、大型の「手長足長絵馬台」があり、近年では2019年の夏の大祭で披露された。高知市春野町芳原(はるのちょうよしはら)の愛宕神社の夏祭りでは2024年に絵馬台が数年ぶりに組まれた。


原在中・在明《春花図》 江戸時代・19世紀 泉屋博古館
釜淵双級巴(絵馬提灯) 第二十四 二十四点のうち アクトミュージアム 【通期展示】

 第3章「絵金と周辺の絵師たち」では、屏風・絵巻・軸物以外の絵金作品や、絵金と関わりの深い絵師の作例を紹介している。

 絵金には御用絵師・町絵師時代を通じ多くの弟子がおり、墓碑には門人や技法を受け継いだ者が数百人と記されている。

 代表的な弟子に、アメリカから帰国したジョン万次郎から聞き書きした漂流記『漂巽紀畧(ひょうそんきりゃく)』を著し坂本龍馬とも交流した河田小龍(かわだしょうりょう)や、「野市絵金(のいちえきん)」と呼ばれた野口左巌(のぐちさがん)がいる。

 また、土佐では男児の初節句に武者絵や芝居絵を描いた横断幕のような幟を門前に飾る風習があり、現存例は少ないが、《近江源氏先陣館 盛綱陣屋(おうみげんじせんじんやかた もりつなじんや)》は絵金号「友竹(ゆうちく)」入りの基準作として貴重な作品。


原在中・在明《春花図》 江戸時代・19世紀 泉屋博古館
義経千本桜 加賀見山旧錦絵(横幟)[部分] 河田小龍 一張 安政4年(1857)  高知県立歴史民俗資料館 
【展示期間:9/10~10/6】

 絵金の魅力は作品はもちろんだが、その波乱の生涯とミステリアスな人物像にもある。

 高知城下・新市町(現・はりまや町)の髪結いの子として生まれた。幼い頃から画才に恵まれ、18歳で土佐藩主の息女・徳姫の駕籠かきの名目で江戸に出て駿河台狩野派の土佐藩御用絵師・前村洞和(まえむらとうわ)に師事する。

 帰郷後は土佐藩家老の御用絵師となり、藩医であった林姓を買い取り林洞意(とうい)を名乗った。町人からの大出世だったが、33歳の時に贋作事件に巻き込まれたとされ、その地位を剥奪され城下を追放されてしまう。その後は、赤岡(現在の香南市赤岡町)を拠点に活動したと伝えられるが、明治9年(1876年)、数え65歳で没した。


原在中・在明《春花図》 江戸時代・19世紀 泉屋博古館
大阪会場展示風景

 作品も生涯も、狂おしくも妖しい魅力に包まれた絵金の、待ちに待った東京での大規模な展覧会。ぜひとも堪能されたい。



入館料

一般¥1,800円(¥1,600)、大学生1,200円(¥1,000)、高校生¥1,000(¥800)

※(   )内は前売料金

※中学生以下無料

※障害者手帳をお持ちの方は、ご本人と介助の方1名様のみ無料

【チケット販売場所】 

サントリー美術館受付(火曜日、展示替え期間中を除く)

サントリー美術館公式オンラインチケット

ローソンチケット:Lコード 33532(前売・当日券共通)

セブンチケット:セブンコード 110-955(前売・当日券共通)

※前売期間は7月2日[水]から9月9日[火]まで

※サントリー美術館受付での前売券販売は8月24日[日]までの開館日に限る


招待券プレゼント
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