修理後大公開!静嘉堂の重文・国宝・未来の国宝
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- 16 時間前
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会期:2025年10月4日[土]~12月21日[日]
前期 10月4日[土]~11月9日[日]
後期11月11日[火]~12月21日[日]
開館時間:午前10時~午後5時 (※入館は閉館の30分前まで)
*毎月第4水曜日は20時まで、12月19日[金]・20日[土]は19時まで開館
休館日:毎週月曜日(ただし10月13日、11月3日、24日は開館)、10月14日[火]、11月4日[火]、25日[火]
会場:静嘉堂@丸の内 (明治生命館1階)
国宝3件、重要文化財17件、重要美術品10件、
そして未来の国宝?!菊池容斎の破格の巨大絵画ら、
静嘉堂ならではの東洋絵画の逸品が勢揃い
静嘉堂@丸の内の開館3周年を記念する本展では、大阪・関西万博にちなみ、20世紀初頭の博覧会に出品した岩﨑家(静嘉堂)所蔵の琳派や肉筆浮世絵、近代絵画などを皮切りに、国宝3件、重要文化財17件、重要美術品10件、そして未来の国宝?!菊池容斎の破格の巨大絵画ら、静嘉堂ならではの東洋絵画の逸品が勢揃いする。
修復を終えた室町時代の屛風や中国宋・元の水墨画も登場し、特に日中の水墨画を比較しながら、筆墨の美しさや自然描写、そして詩書画一体となった東洋絵画の奥深いメッセージを堪能できる絶好の機会となる。

石黒是美「花鳥図大小鐔・三所物」 江戸時代(19世紀前半) 静嘉堂文庫美術館蔵 通期展示
展示は4章構成。第1章は「岩﨑家(静嘉堂)と博覧会―1900年パリ万博から1970年大阪万博まで」。
日本が初めて万国博覧会に正式参加したのは1867年のパリ万博であり、「博覧会」という言葉もこの時期に登場した。岩﨑彌之助は国内外の博覧会に積極的に協力し、その志は小彌太にも引き継がれた。静嘉堂は1940年に財団法人化され、1970年の大阪万博では中国絵画・室町水墨画のコレクションから国宝1件、重文4件、重美2件、合計7件もの名品を出品している。
ここでの見どころはまず、1900年(明治33)のパリ万国博覧会の出品した石黒是美《花鳥図大小鐔・三所物》。江戸時代に中国から輸入された高価な珍鳥「錦鶏」が、金、銀、赤銅、緋色銅を用いて精緻に、そして生命感に溢れるデザインで表現されている。

宮川長春「形見の駒図」 江戸時代(18世紀前半) 静嘉堂文庫美術館蔵 後期11/11(火)~12/21(日)
日英博覧会(1910年/明治43)に出品された宮川長春《形見の駒図》は、曽我兄弟仇討ちの後日談「世継曽我」の見立て。曾我十郎の恋人・虎御前と五郎の恋人・化粧坂の少将が、兄弟の残した馬を曳く図。艶麗な肉筆美人風俗画で18世紀前半に活躍した浮世絵師・宮川長春の名品。

野口幽谷「菊鶏図屏風」(右隻) 明治28年(1895) 静嘉堂文庫美術館蔵 前期10/4(土)~11/9(日)
野口幽谷《菊鶏図屛風》は、1895年(明治28)に京都で開催された第四回内国勧業博覧会のために、静嘉堂文庫を創設した岩崎彌之助が資金援助して制作された屏風絵。椿椿山に学び、渡辺崋山に私淑して特に菊を得意とした独自の描法が見どころ。

倪元璐「秋景山水図」 明時代(17世紀) 静嘉堂文庫美術館蔵 後期11/11(火)~12/21(日)
第2章は「修理後初公開!詩画一致の絵画」。
東洋絵画では、詩や題が添えられる「詩画一致」の伝統があり、中国宋代以降の文人文化が源流となる。
日本でも室町期の禅僧の作品や江戸期の文人画(南画)に受け継がれ、静嘉堂所蔵の絵画の指定品35件のうち、詩画軸や文人画は17件を数える。
作品は紙や絹に描かれるため定期的な修理が必要で、静嘉堂では文化財保護のため修理を続けており、鑑賞者は詩と絵の調和を通じて深い世界を体感できる。
倪元璐(げいげんろ)《秋景山水図》は、明代末期に活躍した浙江省出身の画家。雄大な山水を精緻に描いた希少な代表作で、空の移ろいや遠景の山並み、繁る樹木などが緻密に表現されている点も魅力となっている。光沢ある絖本に描かれているため、見る角度によって全体が輝いて見えるのが特徴なので、ぜひ直に見て確かめてほしい。

菊池容斎「呂后斬戚夫人図」 天保14年(1843) 静嘉堂文庫美術館蔵 前期10/4(土)~11/9(日)
そして本展の目玉となるのが、第3章「未来の国宝?! 菊池容斎の巨幅と重文の水墨山水図屛風」。
前期は幕末明治の画壇の重鎮で、明治中後期に隆盛する「歴史画」の先駆者・菊池容斎の巨幅と、中国明清時代の巨幅の競演。制作背景は異なるが共に大画面に中国古代の奇怪な説話(歴史画)を描いており、日本の文人趣味の人々に鑑賞され、岩﨑家の所有に帰した。
菊池容斎《呂后斬戚夫人図》では、戚夫人が手足を斬られるという残酷なシーンがあるが、それを御簾の向こうに座り見つめる、漢の高祖の皇后・呂后の意地悪そうな表情が見どころ。

菊池容斎「馮昭儀当逸熊図」 天保12年(1841) 静嘉堂文庫美術館蔵 前期10/4(土)~11/9(日)
同《馮昭儀当逸熊図》では一転、前漢の元帝を守るべく脱走した熊の前に立ちはだかる女性・馮媛(ふうえん)の毅然とした雄姿を描く。

菊池容斎「阿房宮図」 江戸時代(19世紀前半) 静嘉堂文庫美術館蔵 後期11/11(火)~12/21(日)
同《阿房宮図》は、秦の始皇帝が宮中三千人を置き遊楽した大宮殿・阿房宮が、秦を滅亡させた項羽が火を放ち3か月燃え続けたとされるシーンを描いたもの。1910年(明治43)の日英博覧会に出品されている。
これら容斎の歴史画三大名幅を依頼したのは、容斎が生涯「自分が今日あるのは久貝殿の賜」と語った久貝因幡守正典(くがいいなばのかみまさのり)。

伝周文「四季山水図屛風」 室町時代(15世紀) 静嘉堂文庫美術館蔵 後期11/11(火)~12/21(日)

重要文化財 式部輝忠「四季山水図屛風」 室町時代(16世紀) 静嘉堂文庫美術館蔵
後期11/11(火)~12/21(日)
後期は、近年修理を終えた二つの重要文化財の屛風、伝周文《四季山水図屛風》と式部輝忠《四季山水図屛風》の競演が実現する。雪舟の師としても知られる周文には、宋元画、特に夏珪や孫君沢の筆墨法を能く学んだ跡がみられ、一方の式部輝忠の方は、唐絵の安定した構図に四季の移ろいと中国文人の故事を点景として描いた個性的な作風が光る。居ながらにして山水に遊ぶ「臥遊」をお楽しみいただきたい。

国宝 伝馬遠「風雨山水図」 南宋時代(13世紀) 静嘉堂文庫美術館蔵 後期11/11(火)~12/21(日)
第4章は「彌之助・小彌太の静嘉堂―未来の国宝と宋元の国宝」。
前期は岩﨑小彌太が模写し松方正義が詩を添えた、主君への忠誠を体現する渡辺崋山の名品《月下鳴機図》双幅を紹介し、崋山の精神が岩﨑家や松方正義に共鳴していたことを示唆する。
後期は、南宋の国宝《風雨山水図》、小彌太が収集を拡充した国宝《曜変天目》、師である諸橋轍次を通じて購入した国宝《与中峰明本尺牘》、彌之助が静嘉堂文庫の名を世界に知らしめた陸心源旧蔵の宋元版より『周礼』など、静嘉堂ならではの宋元の美術・古典籍で締めくくられる。
国宝《風雨山水図》は墨画淡彩で描かれ、植物に緑色を配し、墨の濃淡で雨や波の動きを巧みに表現している。馬遠は南宋の宮廷画家で、山水・人物・花鳥を得意とし、日本の水墨画に大きな影響を与えた。
日中の水墨画を比較しながら、筆墨の美しさや自然描写、そして詩書画一体となった東洋絵画の奥深いメッセージを堪能できるめったにない機会。ぜひ足を運びたい。
【入館料】
一般 1,500円
大学・専門学校・高校生 1,000円
中学生以下 無料
障がい者手帳提示の方 700円(同伴者1名 無料)
【団体でお越しのお客様へ】
20名様以上でご来館の場合は事前にハローダイヤル(050-5541-8600)へお問い合わせください。
※団体割引はございません。
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