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ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢

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  • 9月16日
  • 読了時間: 7分
会期:2025年9月12日[金]〜12月21日[日]
開室時間:9時30分~17時30分、金曜日は20時まで(入室は閉室の30分前まで)
休室日:月曜日、9月16日[火]、10月14日[火]、11月4日[火]、11月25日[火]

※ただし9月15日[月・祝]、9月22日[月]、10月13日[月・祝]、11月3日[月・祝]、11月24日[月・休]は開室


会場:東京都美術館 企画展示室
展覧会公式サイト https://gogh2025-26.jp



家族が守り続けてきたゴッホの作品とその志を未来へと受け継いでゆく、

全く新たな切り口のゴッホ展


  東京都美術館で、これまでにない新たな切り口のゴッホ展が開かれる。

 ひまわりや糸杉を描いた作品で知られる画家、フィンセント・ファン・ゴッホの初期から晩年までの画業をたどるとともに、フィンセント作品を受け継いできた家族のコレクションに着目する、日本初の展覧会だ。


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フィンセント・ファン・ゴッホ 《画家としての自画像》 1887年12月-1888年2月 油彩、カンヴァス 

65.1×50cm ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団) 

Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)


 展示は5章構成。第1章「ファン・ゴッホ家のコレクションからファン・ゴッホ美術館へ」では、ファン・ゴッホ美術館の基礎となったコレクションの形成に貢献したファン・ゴッホ家の3人の人物を紹介している。

 フィンセントの死後、作品を受け継いだ弟テオの意思は、その死後、妻のヨハンナに引き継がれた。ヨハンナは、展覧会への貸出や売却、手紙の出版を行い、死去する前年1924年にはロンドンのナショナル・ギャラリーのために《ヒマワリ》を手放し、フィンセントの評価を確固たるものにした。

 テオとヨハンナの息子でゴッホの甥であるフィンセント・ウィレム・ファン・ゴッホ(愛称エンジニア)は、家族のコレクションの保全に尽力し、1960年にフィンセント・ファン・ゴッホ財団を設立。財団とオランダ政府の協力により、1973年にファン・ゴッホ美術館が開館することとなる。


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ジョン・ピーター・ラッセル 《フィンセント・ファン・ゴッホの肖像》 1886年 油彩、カンヴァス

60.1×45.6cm ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団) 

Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)


 第2章は、「フィンセントとテオ、ファン・ゴッホ兄弟のコレクション」。

 フィンセントとテオの兄弟2人はともに十代半ばから画廊で働き始めていて、版画を収集・交換し、フィンセントは特にフランスやイギリスの雑誌の挿絵や同時代の美術から強い影響を受けた。

 フィンセントは、パリで同時代の画家仲間と自身の作品を交換することで、彼からの評価を得ていた。また、日本の浮世絵を収集し、芸術的なインスピレーションを得ると同時に、高価な印象派の作品と交換することも目的としていた。

 本章で見られる《フィンセント・ファン・ゴッホの肖像》は、パリで出会い親しくなったジョン・ピーター・ラッセルが描いたフィンセントお気に入りの肖像画。

 またフィンセントは、クォストの描くタチアオイを高く評価し、南仏で制作している際には、そのように自分もヒマワリを描きたいと考えていた。《タチアオイの咲く庭》の裏面には「テオ・ファン・ゴッホへ/私の友人フィンセントがこのうえなく愛するこの絵を」と記されている。


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エルネスト・クォスト 《タチアオイの咲く庭》 1886-90年 油彩、板 45.5×55cm 

ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)

Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)


 第3章「フィンセント・ファン・ゴッホの絵画と素描」では、ゴッホの画業を紹介。

 彼は27歳で画家を志し、素描から始めて油彩画へと進み、パリで新しい表現を取り入れて独自の様式を確立した。アルルやサン=レミ、オーヴェールで創作を続けたが、37歳で自死。わずか10年で膨大な作品を残した。

 現在、ファン・ゴッホ美術館には家族が受け継いだ200点超の絵画と500点以上の素描・版画が収蔵され、世界最大のファン・ゴッホ・コレクションとなっている。

 パリに出て、印象派の作品を初めて実際に目にしたゴッホは、新しい色彩と筆づかいを習得する必要を感じた。《グラジオラスとエゾギクを生けた花瓶》ではすでに色調が明るくなってきている。注目すべきは筆づかいで、背景は十字を重ねるようであり、花々はやや厚塗りで描き分けられ、グラジオラスの名の由来となったという鋭い葉やつぼみには勢いある筆触が認められる。


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フィンセント・ファン・ゴッホ 《グラジオラスとエゾギクを生けた花瓶》 1886年8-9月 油彩、カンヴァス 

46.5×38.4cm ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団) 

Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)


 第4章「ヨー・ファン・ゴッホ=ボンゲルが売却した絵画」では、ヨー・ファン・ゴッホ=ボンゲルが行った作品売却が扱われる。

 美術に縁のなかったヨーはテオとの結婚後に知識を深め、膨大な作品を相続してからは収集家や美術館、美術市場に通じるようになった。作品を売却したのは親子の生活のためであると同時に、フィンセントの評価を確立するためでもあった。その記録は会計簿に残され、調査により170点以上の絵画と44点の紙作品の売却が特定されている。

 第2章で展示されているポール・ゴーガン《雪のパリ》は、ヨーに由来する作品。ゴーガンは南仏アルルでフィンセントと2か月を過ごした。彼は自らが所有するゴッホ作品3点について、オランダのヨーに連絡をとって返却を受けた。本作はその感謝の印としてヨーに贈られた作品のひとつとされている。


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ポール・ゴーガン 《雪のパリ》 1894年 油彩、カンヴァス 72×88cm

ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)

Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)


 第5章「コレクションの充実 作品収集」では、ファン・ゴッホ美術館のコレクション拡充について述べられる。

 1973年の開館以来、ファン・ゴッホや家族に関わる作品を中心に収集が進み、1980~90年代には寄付や寄贈、限られた予算での購入によってバルビゾン派・ハーグ派・象徴主義の作品が加わった。1990年代後半からは版画やポスターなど紙作品も収集され、質の高いコレクションに成長。さらに収益が美術館にも分配される宝くじ収益の導入で、印象派やポスト印象派の作品をはじめ重要な作品が加わった。


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「傘を持つ老人の後ろ姿が描かれたアントン・ファン・ラッパルト宛ての手紙」

1882年9月23日頃 ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団) 

Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation) (purchased with support from the Mondriaan Fund, the Ministry of Education, Culture and Science, the VSBfonds and the Cultuurfonds)


 ファン・ラッパルトはフィンセントがブリュッセルで知り合った先輩画家で、互いに手紙で制作や美術について語り合った。本展では、2006年に発見された彼宛ての4通の手紙が展示される。質の悪い紙や色褪せやすいインクが使われているため現物公開は稀であり、今回の展示は非常に貴重である。


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フィンセント・ファン・ゴッホ 《オリーブ園》 1889年11月 油彩、カンヴァス 73.2×92.2cm 

ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団) 

Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)


 本展では、大規模空間での映像上映によるイマーシブ(没入型)体験も提供される。

 世界的に人気を集めるこの手法は、若い世代が新たにファン・ゴッホに関心を持つ契機となっている。ファン・ゴッホが望んだ「100年後を生きる人々にも自分の絵を観てもらいたい」夢を実現するもので、《花咲くアーモンドの木の枝》などの代表作を高精細映像で投影し、3Dスキャンを行ってCGにした《ひまわり》(SOMPO美術館蔵)の映像も紹介。鑑賞者は作品に入り込むように、筆づかいや絵具の表現を新たに体感することができる。

 ファン・ゴッホ美術館の現在の活動を交えつつ、本展を通じて、家族が守り続けてきた画家の作品とその志を未来へと受け継いでいく。



観覧料(税込)

通常券 一般 2,300円/ 大学生・専門学校生 1,300円/ 65歳以上 1,600円

・大学生・専門学校生は、9月平日のみ無料。

・18歳以下、高校生以下は無料。

・身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)は無料。

・18歳以下、高校生、大学生・専門学校生、65歳以上の方、各種お手帳をお持ちの方は、いずれも証明できるものをご提示ください。

※土日・祝日および12月16日[火]以降は日時指定予約制(当日空きがあれば入場可)

※12月12日[金]までの平日にご来場の場合は日時指定予約は不要です。

※各種お手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)、18歳以下、高校生以下の方は、日時指定予約は不要です。

※詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。


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