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オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語

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  • 10月16日
  • 読了時間: 8分

更新日:10月16日

会期:2025年10月25日[土]ー2026年2月15日[日]
開館時間:9時30分~17時30分(金・土曜日は20時まで)※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日、11月4日[火]、11月25日[火]
    12月28日[日]-2026年1月1日[木・祝]、1月13日[火]
    (ただし、11月3日[月・祝]、11月24日[月・休]、1月12日[月・祝]、2月9日[月]は開館)

会場:国立西洋美術館
展覧会公式サイト https://www.orsay2025.jp


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エドガー・ドガ《家族の肖像(ベレッリ家)》 1858-1869年 油彩/カンヴァス

201×249.5cm オルセー美術館、パリ © photo:C2RMF / Thomas Clot



“印象派の殿堂” オルセー美術館から、日本初公開を含む優品約70点が来日!!

「室内」をテーマに「戸外の光」だけでない印象派のもうひとつの魅力を紹介!!


 印象派といえば、移ろう光や大気とともにとらえた戸外風景が有名だが、彼らは近代化が進む19世紀パリの室内風景にも強い関心を持っていた。

 エドガー・ドガは心理的な室内画に優れ、ピエール=オーギュスト・ルノワールは親密な光の描写で知られる。他にもエドゥアール・マネやクロード・モネらが室内装飾のための作品を制作しており、印象派と室内は深い関係があった。

 本展では、オルセー美術館の所蔵品を中心に、約100点の作品を通じて印象派の室内表現を紹介。現実の鋭い観察に基づく近代的な感覚により、家族肖像画の新たな境地を開いたとされるドガの代表作《家族の肖像(ベレッリ家)》も日本初公開される。


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フレデリック・バジール《バジールのアトリエ(ラ・コンダミンヌ通り)》 1870年 油彩/カンヴァス 98×128cm

オルセー美術館、パリ © GrandPalaisRmn (musée d'Orsay) / Gabriel de Carvalho / distributed by AMF


 第1章は「室内の肖像」。19世紀、印象派にとって肖像画は重要な表現手段であり、人物を日常空間に描くことで個性や社会的属性を表現した。

 芸術家仲間を描いた作品では創作の場や道具が芸術理念を示し、公的な肖像では服装や室内装飾が社会的地位を象徴する。家族肖像では愛情や心理的ドラマ、近代的な家族観も表現された。これらの肖像画は、印象派が追求した現代性(モデルニテ)と深く関わっている。

 フレデリック・バジール 《バジールのアトリエ(ラ・コンダミンヌ通り)》は、バジールがルノワールと共有していたアトリエを描いた作品で、芸術家仲間の交流の場としての雰囲気が表されている。画中にはイーゼルにのった絵画を前にステッキを持つマネが、パレットや筆を手にしたバジールと向き合い、音楽家・収集家のメートルがピアノを弾き、ルノワールやモネ、エミール・ゾラらも登場して、壁には戸外制作による作品も掛けられている。バジールの姿はマネが描き足したもので、画家たちの友情と協働の様子がうかがえる。


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エドゥアール・マネ《エミール・ゾラ》 1868年 油彩/カンヴァス 146×114cm オルセー美術館、パリ

© GrandPalaisRmn (musée d'Orsay) / Adrien Didierjean / distributed by AMF


 エドゥアール・マネ 《エミール・ゾラ》は、マネが、自身を擁護した作家ゾラへの感謝として描いた肖像画。机上にはゾラの評論冊子や執筆道具が置かれ、背景には《オランピア》(オルセー美術館)やベラスケス《バッカスの勝利》(プラド美術館)の複製版画、日本の浮世絵などが描かれている。これらはゾラの職業やマネの芸術的関心を象徴し、二人の友情と芸術的共闘を示す作品となっている。


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クロード・モネ《アパルトマンの一隅》 1875年 油彩/カンヴァス 81.5×60cm オルセー美術館、パリ

© GrandPalaisRmn (musée d'Orsay) / Martine Beck-Coppola / distributed by AMF


 クロード・モネ 《アパルトマンの一隅》は、モネがアルジャントゥイユで暮らしていた自宅の室内を描いた作品で、手前の明るいカーテンと奥の暗い部屋との対比が印象的。光と陰、暖色と寒色の効果が巧みに用いられ、奥には逆光に浮かぶ長男ジャンと、さらに奥の窓辺には妻カミーユと思われる姿が見える。光の表現へのモネの鋭い感性が際立つ作品である。


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エドゥアール・マネ《ピアノを弾くマネ夫人》 1868年 油彩/カンヴァス 38.5×46.5cm

オルセー美術館、パリ © GrandPalaisRmn (musée d'Orsay) / Tony Querrec / distributed by AMF


 第2章は「日常の風景」。

 印象派の画家たちは、家庭での音楽や読書、針仕事といった身近な日常を題材にし、室内のくつろぎや人間関係を描いた。これらの情景は主に女性が担い、当時の私的空間が女性の領域とされていた背景がある。

 さらに、外界から遮断された私室の最奥部では、身繕いや寝台に横たわる女性の姿を通して生身の肉体に迫ることで、神話や理想化を排した新しいリアルな裸婦表現にも挑戦した。

 エドゥアール・マネの《ピアノを弾くマネ夫人》。マネとドガは音楽好きで親交があり、互いの家で音楽サロンを開いていた。本作はマネの妻シュザンヌの演奏風景を描いたもので、彼女の才能と気品をランプの光や鏡の輝きで表現している。ドガも同じ場面を描き贈ったが、マネが妻の描写に不満を抱いて作品を切断し、両者の関係に亀裂が生じた。


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ピエール=オーギュスト・ルノワール《ピアノを弾く少女たち》 1892年 油彩/カンヴァス 116×90cm

オルセー美術館、パリ © GrandPalaisRmn (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF


 ルノワールが1892年に描いた《ピアノを弾く少女たち》は、暖色を基調とした柔らかな筆致で、音楽に満ちた優雅で理想的な家庭の情景を表現した作品。ピアノ演奏が上流階級の教養とされていた当時の文化を背景に、幸福感あふれる室内の一瞬を描いている。印象派が公的に評価され始めた時期の作で、同主題の6点のうち本作が国家に買い上げられた。


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ピエール=オーギュスト・ルノワール《大きな裸婦》 1907年 油彩/カンヴァス 71×156cm

オルセー美術館、パリ © GrandPalaisRmn (musée d'Orsay) / Stéphane Maréchalle / distributed by AMF


 ルノワールは生涯を通じて裸婦を多く描き、20世紀初頭にはティツィアーノやルーベンスに連なる豊かな裸体表現を確立した。本作《大きな裸婦》では、伝統的な横たわる裸婦の主題を用いながら、ふくよかな身体の曲線や質感を柔らかな光と調和のとれた色彩で描き、アングルの《グランド・オダリスク》(ルーヴル美術館)やマネの《オランピア》(オルセー美術館)とは異なる、くつろいだ親密な雰囲気を表現している。


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エドガー・ドガ《足治療師》 1873年 油彩、エッサンス/紙(カンヴァスで裏打ち) 61.5×46.5cm

オルセー美術館、パリ © GrandPalaisRmn (musée d'Orsay) / Tony Querrec / distributed by AMF


 ドガの《足治療師》は、彼の関心が華やかな舞台や優雅な姿から、より日常的で生々しい現実へと移っていた晩年の傾向を示す作品。踊り子の足の治療という労働と肉体の関係を描き、抑えられた光と色彩の中で、彫刻的な形態を強調し、人間の動作の瞬間を鋭く捉える、

写実主義的な探求を象徴している。


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エミール・ガレ 花挿:湖水風景  1878年頃 ガラス 24×22×14cm オルセー美術館、パリ

© GrandPalaisRmn (musée d'Orsay) / Tony Querrec / distributed by AMF


 第3章は「室内の外光と自然」。印象派の画家たちは、自然や光への関心から、室内と戸外の境界にある空間(バルコニー、テラス、温室など)を絵画の題材に選び、両者を融合させた。19世紀にはガラス温室が都市部で流行し、ブルジョワ家庭の装飾としても取り入れられる。また、伝統的な室内装飾としての花の静物画にも画家たちは取り組み、ジャポニスムの影響を受けながら自然をモチーフに新たな装飾美術を展開していった。

 エミール・ガレによる花挿:湖水風景もまた、自然の美を室内装飾品に取り込んだ作品。


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アルベール・バルトロメ《温室の中で》 1881年頃 油彩/カンヴァス 235×145cm オルセー美術館、パリ

© GrandPalaisRmn (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF


 アルベール・バルトロメの《温室の中で》は、明るい戸外から温室へ入る妻を描いた作品で、古典的な造形に加え、カイユボットを思わせる光の表現や鮮やかな筆致が特徴。夫妻のサロンには多様な芸術家が集い交流したが、1887年に妻を亡くした後、バルトロメは彫刻に専念する。本展では、作品中の妻のサマードレスも併せて展示される。


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クロード・モネ《七面鳥》 1877年 油彩/カンヴァス 174×172.5cm オルセー美術館、パリ

© GrandPalaisRmn (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF


 第4章は「印象派の装飾」。「モネ《七面鳥》は、印象派初期の重要な収集家で実業家のエルネスト・オシュデが所有するモンジュロンの城館を飾るために制作された装飾画。モネはサロン用に4点を描き、そのうち《七面鳥》では庭を歩く群れを堂々と描いた。本展では、戸口上の装飾として構想されたマネの《花の中の子ども》も出品される。どちらも親しい題材を大胆な構図と軽快な筆致で描き、1870年代印象派の特徴をよく示している。


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ギュスターヴ・カイユボット《ヒナギクの花壇》 1893年頃 油彩/カンヴァス 205×116cm

ジヴェルニー印象派美術館 © Giverny, musée des impressionnismes / photo: François Doury


 カイユボット《ヒナギクの花壇》は、彼の自邸プティ=ジェヌヴィリエの壁面装飾のために描かれたと考えられる作品。印象派の支援者でもあったカイユボットは園芸に熱心で、モネと情熱を共有していた。白いヒナギクで埋め尽くされた画面は、後のモネの「睡蓮」シリーズを思わせる装飾的構成を示している。


 オルセー美術館の印象派コレクションがこの規模で来日するのはおよそ10年ぶり。「印象派の殿堂」ともいわれるパリ・オルセー美術館の傑作を中心に、室内をめぐる印象派の画家たちの関心のありかや表現上の挑戦をたどる。



観覧料(税込)

◉前売券 販売期間:2025/5/29~10/24

一般 2,100円

大学生 1,300円

高校生 900円

◉当日券 販売期間:2025/10/25~2026/2/15

一般 2,300円

大学生 1,400円

高校生 1,000円


※中学生以下、心身に障害のある方及び付添者1名は無料。(学生証または年齢の確認できるもの、障害者手帳をご提示ください)

※大学生及び高校生の方は、入館の際に学生証をご提示ください。

※国立美術館キャンパスメンバーズ加盟校の学生・教職員は、本展を学生1,200円、教職員2,100円でご覧いただけます。

(学生証または教職員証をご提示のうえ会期中、ご来場当日に国立西洋美術館の券売窓口にてお求めください)

※12月12日(金)~12月26日(金)は高校生無料観覧日。券売窓口にて学生証をご提示ください。

※観覧当日に限り、本展の観覧券で常設展もご覧いただけます。

※前売券は5月29日(木)から10月24日(金)までの販売。(国立西洋美術館インフォメーションでの販売は10月22日(水)まで。開館日のみ)


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