オディロン・ルドン ―光の夢、影の輝き
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- 4月15日
- 読了時間: 4分
会期:2025年4月12日[土]〜 6月22日[日]
開館時間:10時~18時(ご入館は17時30分まで)
※5月2日[金]、6月6日[金]、6月20日[金]、
6月21日[土]は夜間開館 20時まで開館(ご入館は19時30分まで)
休館日:水曜日(ただし6月18日は開館)
会場:パナソニック汐留美術館

オディロン・ルドン《窓》 1906年頃 油彩/画布 69×50.3cm 岐阜県美術館
繊細な黒から華やかな色彩へ。印象派と同時代を生きながら
対照的な表現を追究した、心に沁みるルドンの世界を堪能する。
世界屈指の岐阜県美術館のコレクションを中心に、国内外の名品を加えた約110点の作品により、その豊穣な画業の全容を紹介するオディロン・ルドン(1840-1916)の回顧展が開幕。
クロード・モネと同い年で、印象派の画家たちと同時代を生きたものの、その表現方法は対照的。伝統と革新の狭間で、その後の画家たちに影響を与えた近代美術の巨匠・ルドンが、独自の表現を築き上げていく姿を追う。

オディロン・ルドン《『起源』IV.セイレーンは無数の針をつけて波間から現れた》
1883年 リトグラフ/紙 30×23.4cm 岐阜県美術館
ルドンは、フランス南西部のボルドーに生まれ、水彩画家スタニスラス・ゴランから素描を学び、ジャン=レオン・ジェロームの画塾で指導を受けた。
また、ボルドーの植物学者アルマン・クラヴォーを通して、自然科学のみならず、文学や哲学の世界に触れ、その後の芸術表現の素地となる思想を形成していきます。
1872年にパリへ再移住後は、木炭画で奇怪なモチーフや、気球や電球など最新の技術への関心を、モノクロームで表現している。一方で、石版画にも取り組み、『夢のなかで』(1879年)、『起源』(1883年)などの石版画集を立て続けに刊行している。

オディロン・ルドン 《光の横顔》 1885-90年頃 木炭/紙 38.8×28.9cm
オルセー美術館(ルーヴル美術館版画素描部) © GrandPalaisRmn (musée d'Orsay) / Gérard Blot / distributed by AMF
ルドンの黒を基調とした木炭画と石版画は、ユイスマンスによって世紀末デカダンスの象徴として紹介され、フランス、ベルギー、オランダの文学者から注目を集めることとなる。
1890年代には、ルドンは収集家や美術商、画家仲間との新たな人脈を構築し始め、ナビ派の若い芸術家たちから先駆者として慕われるようになる。
同時に、作品の主題は闇から光へと変化し、黒は光を表現するものへと変容。また、油彩やパステルによる制作も始まり、色彩への志向の萌芽が見られるようになる。
《光の横顔》の、塗りを重ねたり消したり、様々な方法を試みた、繊細な精神性を表す黒の表現に注目してほしい。
また、《神秘的な対話》は、ルドンが本格的に色彩作品に取り組み始めたころの作品で、1882年に制作したモノクロのリトグラフから発展したもの。ルドンのコレクターだった土無シー伯爵が所蔵していたもの。

オディロン・ルドン《神秘的な対話》 1896年頃 油彩/画布 65×46cm 岐阜県美術館
1896年、パリの凱旋門近くの新居で制作を始めたルドンは、ナビ派の画家たちが挑戦していた装飾的な絵画にも取り組み始める。
それまでの神秘的な主題に加え、神話、宗教、人物といった分かりやすい主題も扱い、《花瓶の花》は晩年の代表的な画題となる。
パステルの重ね塗りによる光の効果や、油彩でありながらパステルのような輝きを追求するなど、技法も進化。
1900年のパリ万博出品を機に国内での評価を確立し、レジオン・ドヌール勲章を受章、サロン・ドートンヌでの個室展示、1913年のアーモリー・ショー出品などを経て、国際的な地位も確立する。

オディロン・ルドン《黒い花瓶のアネモネ》 1905年頃 パステル/紙 64.8×57.5cm 岐阜県美術館

オディロン・ルドン《オリヴィエ・サンセールの屏風》 1903年
テンペラ、グァッシュ、 油彩/画布、四曲屏風 各扇 169.2×55cm 岐阜県美術館
本展では、晩年の主要な画題の一つである「ステンドグラス」を描いた《窓》(1906年頃)が、本展(東京)で初公開されるほか、ルドン流の進化論といわれる石版画集『起源』が9点揃って展示されることも大きな見どころ。
《窓》は、ルドンが66歳頃の色彩の時代に描かれた作品。窓枠のある構図で、窓の向こうが「聖なる場所」であることを示唆している。

オディロン・ルドン《自画像》 1867年 油彩/板 41.7×32cm
オルセー美術館 © GrandPalaisRmn (musée d'Orsay) /Hervé Lewandowski /distributed by AMF
19世紀後半から20世紀初頭、科学技術の発展と芸術潮流の変遷という社会の変化の中、ルドンは活動の場や表現方法を多様に変化させた。その結果生まれた、光と影が織りなす輝きを持つ彼の芸術は、時代や地域を超えて人々を魅了し続けている。
あらためて、ルドンが到達しようとしたものは何だったのか。本展はそれを確認する絶好の機会となるだろう。
入館料
一般:1,300円、65歳以上:1,200円、大学生・高校生:800円、中学生以下:無料
※障がい者手帳をご提示の方、および付添者1名まで無料でご入館いただけます。
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