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開館20周年特別展 円山応挙 革新者から巨匠へ

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  • 11月8日
  • 読了時間: 6分

更新日:11月8日

会期:2025年9月26日[金]〜11月24日[月・振休]

※会期中展示替えを行います。

開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)
休館日:10月27日[月]

監修:山下裕二(明治学院大学教授) 企画協力:広瀬麻美(浅野研究所)


会場:三井記念美術館



日本美術の至宝・円山応挙の魅力を多角的に掘り下げ、

知られざる驚きと気づきを届ける特別展


 円山応挙は江戸時代を代表する画家として高く評価されてきたものの、近年は伊藤若冲をはじめとする「奇想の画家」たちの台頭により、注目度がやや低下している。

 しかしながら、18世紀の京都画壇に革新をもたらしたのは応挙であり、写生に基づいたリアルな画風は当時の人々に強い衝撃を与えた。その人気により多くの弟子が集まり、円山四条派が形成されたのだ。

 現代では「ふつうの絵」に見えるかもしれないが、当時の人々にとっては初めてバーチャルリアリティを体験するような、画期的な作品だった。

 本展は、応挙が革新者から巨匠へと成長していく過程を、三井記念美術館の展示室空間をたっぷりと使って展開し、名品・新発見作品・貴重な資料とともに紹介する。


柿本人麻呂坐像 東山神明神社

重要文化財 「遊虎図(16面の内)」 円山応挙筆 天明7年(1787) 香川・金刀比羅宮


 まず注目は、香川県の金刀比羅宮からはるばるやってきた《遊虎図》(重要文化財)。

 今も「こんぴらさん」の愛称で親しまれる金刀比羅宮は、明治以前は金毘羅大権現を祀るもと神仏混交の信仰の地であり、応挙が《遊虎図》を描いた表書院はその別当寺・金光院の建物だった。制作の背景には、応挙と繋がりのあった仏師・田中弘教や、北三井家五代・三井高清(たかきよ)、応挙と交わった四代・高美(たかはる)など、三井家の支援があった。

 《遊虎図》は全16面からなる大作で、神事・仏事関係者を迎える大広間を飾った。迫力ある虎の姿や繊細な毛並みの描写が特徴で、本展にも出品されている《虎皮写生図屏風》(本間美術館蔵)に通じる写生力が見られる。


白山妙理大権現坐像 小川神明神社

両面宿儺坐像 千光寺

重要文化財 「藤花図屛風」 円山応挙筆 安永5年(1776) 根津美術館 【展示期間:10月28日~11月10日】


 次に紹介したいのが、《藤花図屛風》(重要文化財)。

 六曲一双の金地屏風に藤のみを描いた作品で、応挙の高度な技術と感性が際立つ。花は白・青・紫を複雑に重ねて立体感を出し、葉は軽やかに彩色、幹や蔓は墨の濃淡による「付立て」で描かれ、やまと絵と漢画の技法が見事に融合。幅の広い平筆を用い、薄墨と濃墨を使い分けた平筆を捩りながら走らせる技法で、幹や蔓の複雑な曲線を巧みに表現している。

 写生に基づく独自の様式を示す代表作であり、等伯の「松林図屏風」や光琳の「燕子花屏風」に連なる、日本美術史上重要な作品。この機会に、ぜひ間近で観察されたい。


柿本人麻呂坐像 東山神明神社




















「竹鶏図屛風」 伊藤若冲筆 寛政2年(1790)以前 個人蔵


柿本人麻呂坐像 東山神明神社


















                      「梅鯉図屛風」円山応挙筆 天明7年(1787) 個人蔵


 伊藤若冲との合作屏風、若冲《竹鶏図屛風》、応挙《梅鯉図屛風》も見どころ。

 この屏風は2024年の報道で話題となり、翌年に大阪中之島美術館で公開された後、本展で東京初公開となった。

 金屏風一双に、若冲が鶏、応挙が鯉を描いた合作で、注文主の依頼によるものと考えられる。制作年は応挙が数え年55歳の天明七年(1787)、若冲は75歳の寛政2年(1790)以前(若冲の「年齢加算」疑惑を考慮)。応挙の穏やかな筆に対し、若冲は力強く筆を揮っており、応挙作を見た若冲が後に制作したと推測される。

 また、この屏風は1915年の「大典記念京都博覧会」に出品され、当時は京都の呉服商の所蔵であったことが新たに判明したという。さらに日本画家・渡辺省亭がこの合作を見て、自作の屏風に影響を受けた可能性も指摘される。

 長らく交流の記録がなかった、若冲と応挙の関係に想像をかき立てる貴重な作品である。


愛染明王坐像 霊泉寺

「大石良雄図」 円山応挙筆 明和4年(1767) 一般財団法人武井報效会 百耕資料館

【展示期間:10月28日~11月24日】


 掛軸にも、注目作品がならぶ。

 《大石良雄図》は、縦約189cmの大作で、三人の人物を等身大に描く。題材は『仮名手本忠臣蔵』七段目「祇園一力茶屋の場」とされ、中央に大星由良助、右におかる、後方に力弥が描かれるが、おかるが二階から鏡を用いて密書を読む由良助を盗み見するという芝居そのものを忠実に再現したものではない。

 制作は明和4年(1767)の円満院時代で、円満院祐常の依頼による可能性が高い。『萬誌」に記された「大図三人」が本作を指すとの説もある。

 明代道釈人物画の構図を参考にしつつ、写生と古画研究を融合させて迫真性と美を両立させた応挙の代表的な人物画であり、同様の類作が複数存在した可能性も指摘されている。


十一面観音菩薩立像 村上神社

「江口君図」 円山応挙筆 寛政6年(1794) 静嘉堂文庫美術館 (公財)静嘉堂/DNPartcom

【展示期間:9月26日~10月26日】


 《江口君図》は、謡曲「江口」をもとに、遊女・江口君を普賢菩薩に見立てた主題で、当時の教養人には理解される趣向だった。

 従来の研究は女性像に注目してきたが、本作の象は白象ではなく現実のゾウとして描かれている点が特徴である。その描写は、応挙が西洋の博物図譜『動物図譜』(ヨンストン作)を参照した可能性を示唆しており、構図や陰影の付け方にも一致がみられる。ただし当時この書は希少であり、応挙が入手したとすれば写本経由だったと考えられる。こうした点から、晩年の応挙が新しい知識や図像に積極的に取り組んでいたことがうかがえる。


弁財天立像 飛騨国分寺

「雪柳狗子図」 円山応挙筆 安永7年(1778) 個人蔵


 三匹の子犬が描かれた《雪柳狗子図》。輪郭線のみで描かれる白い犬、鼻の周りと胸のあたりだけが白い黒い犬、同じところが白い茶色い犬。こうした可愛らしい子犬の表現は人気を集めたようで、応挙はかなりの数の作品を遺している。こうした需要の高さからか、弟子の芦雪も子犬を描き、それもまた人気となったようだ。子犬だけでなく、雪の積もった柳の描写にも、応挙の高度な技法とセンスが凝縮されている。


薬師如来立像 薬師堂

「青楓瀑布図」 円山応挙筆・皆川淇園賛 天明7年(1787)サントリー美術館

【展示期間:9月26日~10月26日】


 《青楓瀑布図》は、滝と青楓を描いた初夏の情景で、水の勢いと岩の質感、奥行きが巧みに表現された作品。胡粉を散らすようにして表すことで、水の勢いと「水玉」としての存在感が強調されている。縦約1.8メートルの大作で、応挙の代表作《瀑布図》に通じる迫力を持ちながら、より鑑賞性を重視した構成となっている。

 右上の賛は儒者・皆川淇園によるもので、滝を銀河にたとえるなど漢詩的表現が用いられ、自然描写と詩情が調和した一幅となっている。


 このほかにも、国宝《雪松図屏風》【展示期間:11月11日〜24日】、応挙の自画像とされる《元旦図》、さらりと女性の艶を描いた《行水美人図》、「応挙遺印」23顆、制作の過程がわかる写生の数々など、見どころは盛りだくさん。

 日本美術の至宝、円山応挙の魅力を多角的に掘り下げ、訪れる人々一人ひとりに、これまで知られていなかった驚きと気づきを提示する特別な展覧会です。



観覧料:一般1,800円(1,600円)、大学・高校生 1,300円(1,200円)、中学生以下 無料

※70歳以上の方は1,500円(要証明)。

※20名様以上の団体の方は( )内割引料金となります。

※リピーター割引:会期中一般券、学生券の半券の提示で、2回目以降は( )内割引料金となります。

※障害者手帳の提示された方、およびその介護者1名は無料です(ミライロIDも可)。

※音声ガイドで分かりやすく解説いたします。(日本語のみ、有料) ナビゲーター 小林薫 氏(俳優)

※予約なしでご入館いただけます。展示室内の混雑を避けるため入場制限を行う場合があります。


お問い合わせ先 050–5541–8600(ハローダイヤル)

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