在原業平生誕1200年記念 特別展 伊勢物語 美術が映す王朝の恋とうた
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- 11月8日
- 読了時間: 4分
会期:2025年11月1日[土]~12月7日[日]
前期:11月1日[土]〜11月16日[日]
後期:11月18日[火]〜12月7日[日]
開館時間:10時~17時(入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜日 ※ただし11月3日[月・祝]、11月24日[月・祝]は開館、翌火曜休館
会場:根津美術館(会場 展示室1・2・5)
同時開催 テーマ展示
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【展示室6】口切 ー茶人の正月ー
源氏物語と並ぶ古典文学の名作『伊勢物語』から生まれた
書・絵画・工芸を一堂に集めた展覧会
『源氏物語』と並び、日本の文化・芸術のあらゆる分野に多大な影響を与えた『伊勢物語』。平安時代前期に活躍した在原業平(825〜880)の和歌を中心とする125編の短編物語集だ。
業平といえば、天皇の孫で、和歌に優れた貴公子。『古今和歌集』などに収められる業平の和歌からは、恋多き生き方も浮かび上がってくる。
そんな業平の生誕1200年にあたる2025年を記念して『伊勢物語』から生まれた絵画、書、工芸を一堂に集めた展覧会。

《在原業平像》 室町時代 16世紀 根津美術館蔵
印刷技術が発達する以前、人々は物語を写本や絵巻、絵本といったかたちで楽しんでいた。
第1章「在原業平と伊勢物語 古筆と古絵巻」では、中世以前にさかのぼる『伊勢物語』の美術を紹介する。ここでは、平安時代に書写された現存最古の断簡で、藤原公任筆と伝わる《伊勢物語切》をはじめ、『伊勢物語』を題材とする彩色絵巻の中でも最古の重要文化財《伊勢物語絵巻》、そして初公開となる《在原業平像》などが展示されている。

《伊勢物語絵巻(部分)》 鎌倉時代 13〜14世紀 和泉市久保惣記念美術館蔵(11/1-16展示)
『伊勢物語』の受容が大きく広がるきっかけとなったのは、江戸時代初期に挿絵入りの版本(嵯峨本)が出版されたことだった。これにより『伊勢物語』はより多くの人々に親しまれ、絵画表現への関心も一層高まって多様な作品が生み出されていった。
第2章「描かれた伊勢物語 歌とともに」では、岩佐又兵衛による重要文化財《伊勢物語 梓弓図》や、冷泉為恭の《伊勢物語 八橋図》など、江戸時代に描かれた多彩な絵画作品を紹介する。とりわけ宗達、又兵衛、為恭にぐるりと取り囲まれる展示室2は壮観。

重要文化財《伊勢物語 梓弓図》 岩佐又兵衛 江戸時代 17世紀 文化庁蔵
岩佐又兵衛《伊勢物語 梓弓図》は、伊勢物語第24段「梓弓」の場面を描いた作品である。都へ出仕した男を待っていた女は、ついに別の男と結婚を決め、帰ってきた男を門前で拒む。門の前に立ち尽くす男の姿から、孤独と悲しみが伝わる。
この絵は、岩佐又兵衛(1578〜1650)が生み出した新しい解釈の伊勢物語絵である。

《扇面歌意画巻》(部分) 江戸時代 17世紀 根津美術館蔵
『伊勢物語』を題材とした絵画には、物語の場面を描くものと、作中の和歌の内容や情景を表すものがある。すなわちそこには、「物語絵」と「歌絵」という二つの伝統が息づいているのである。なかでも、和歌のモチーフのみを取り上げた「歌絵」は、工芸の分野とも結びつきながら発展した。
第3章「伊勢物語の意匠ー物語絵と歌絵のあわいー」では、「八橋」の和歌を題材とした《八橋蒔絵硯箱》や、和歌とその歌を連想させる扇型の絵を組み合わせた《扇面歌意画巻》などを通して、『伊勢物語』の多彩な受容の広がりを紹介する。

《八橋蒔絵硯箱》 江戸時代 17世紀 サントリー美術館蔵
《八橋蒔絵硯箱》の「八橋」の場面の和歌は、「かきつばた」の五文字を各句の冒頭に置いて詠まれた歌である。この硯箱の意匠は、物語の情景や和歌の趣を、モチーフだけで表している。人物を描かず情景のみで表す工芸の「留守模様」は、「歌絵」と深く関わっている。
『伊勢物語』の核心をなす和歌に光を当てつつ、平安時代から江戸時代にかけての名品を紹介する根津美術館渾身の展覧会。
深まる秋から冬へと移る季節を、「美術が映す王朝の恋とうた」の世界とともに過ごしてみてはいかがだろう。
入場料 オンライン日時指定予約
一般1500円
学生1200円
*障害者手帳提示者および同伴者は200円引き、中学生以下は無料




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