会期:2024年6月28日[金] – 8月25日[日]
前期:6月28日[金] – 7月28日[日]
後期:7月30日[火] – 8月25日[日]
開館時間:10時~18時(金・土曜日は、20:00まで) ※入場受付は閉館の30分前まで
休室日:7月1日[月]、8日[月]、29日[月]、8月5日[月]
※第1月曜日は全館休館
会場:千葉市美術館
展覧会公式サイト https://www.ccma-net.jp/exhibitions/
同時開催:つくりかけラボ15 Art Lab 15 (4階 子どもアトリエ)
「齋藤名穂| 空間をあむ 手ざわりハンティング Tactile Hunt Weaving Space」
驚くべき質を誇る摘水軒コレクションの全容を紹介する2つの展覧会
江戸時代、柏村(現在の柏市)の名主を務め、水戸街道沿いに文化サロンとなった居宅「摘翠軒」を設けたことで知られる寺嶋家。同家をルーツとする摘水軒記念文化振興財団は、岩佐又兵衛をはじめとする肉筆浮世絵や、伊藤若冲などの花鳥・動物画をコレクションしている。このコレクションを中心に構成された2つの展覧会が、今回の千葉市美術館での展示となる。
岡本秋暉《白梅孔雀図》 安政3年(1856) 絹本着色 一幅 摘水軒記念文化振興財団蔵
「岡本秋暉 百花百鳥に挑んだ江戸の絵師 ―摘水軒コレクションを中心に」は、江戸後期の画人・岡本秋暉(おかもとしゅうき、1807-62)を取り上げ、その生涯と作品を18年ぶりに回顧するもの。全91点中、78点が岡本秋暉の作品となる。
岡本秋暉は彫金家・石黒政美の次男として生まれ、南蘋派の大西圭斎に画を学んだ。20代にはすでに絵師として活躍し、岡本家の養子となって小田原藩・大久保家に仕える藩士(見回り役)としても務めた。その驚異的な技巧を駆使した鳥の絵は、同時代の人々に高く評価されたという。
岡本秋暉《百花一瓶図》 江戸時代(19世紀) 絹本着色 一幅 摘水軒記念文化振興財団蔵
展覧会は4章構成。第1章「若き日の秋暉─画業の始まり」では、秋暉の若い頃の作品を紹介している。25歳のときの作品《孔雀図》は、後年の作品に比べて柔和な描法・色遣いが特徴。一方、孔雀の足元のタンポポの葉はシャープな輪郭線が用いられており、後の画風の萌芽が見て取れる。
第2章「小田原藩士として─二宮尊徳像と藩主御殿杉戸絵」では、秋暉が小田原藩に仕えた時期の作品を紹介。藩主御殿の二の丸御屋形の正面玄関を飾った《孔雀図》《桑に鳥図》《鯉図》《梅図》などの杉戸絵や、農村復興の指導者・二宮尊徳の肖像画も展示されている。尊徳は顔を描かれるのを嫌ったため、秋暉は影に隠れて写生したという異色のエピソードがある。
岡本秋暉《百花百鳥図》 江戸時代(19世紀) 紙本着色 一幅 摘水軒記念文化振興財団蔵
第3章「花鳥画家 秋暉─技巧の洗練と交友」では、秋暉の画業がピークを迎える40代の作品を中心に、花鳥画の優れた作品を紹介している。秋暉は小鳥店に通い詰めて観察と写生を繰り返したり、中国の「百鳥図」の図様をベースに秋暉流の百花百鳥図を描くなどして、技術を高めていった。孔雀、鶏、鷹など様々な鳥を描いた作品が展示され、生命力に溢れた羽の質感などが堪能できる。特に1853年の《孔雀図》は、金や群青、緑青などの高価な画材を使い、秋暉の技術の集大成といえる作品となっている。
第4章「『秋暉老人』愉しむ─円熟期・画作の広がり」では、56歳で世を去るまでの秋暉を追う。晩年の秋暉は「秋暉老人」を称し、自由闊達な作品を描き続けた。その精神性と細密な描写が融合した作品を通じて、秋暉の到達点を感じることができる。
本展は、秋暉の生涯と作品を通じて、その魅力を存分に堪能のすることができる、後の世まで語り継がれる岡本秋暉展となることだろう。
岡本秋暉《名花双禽図》 安政2年(1855) 絹本着色 一幅 摘水軒記念文化振興財団蔵
一方、「江戸絵画縦横無尽!摘水軒コレクション名品展」では、摘水軒所蔵の江戸絵画の
中から、肉筆浮世絵や南蘋派、洋風画など、104点の作品を選りすぐり、4つの章に分けて紹介する。
第1章「肉筆浮世絵の美」では、岩佐又兵衛の《弄玉仙図》(重要文化財)を筆頭に、菱川師宣、宮川長春、鈴木春信、勝川春章、鳥居清長、喜多川歌麿らによる1点ものの肉筆浮世絵が一堂に会する。また、歌川派の国貞、広重、国芳や北斎派の絵師の作品も紹介され、江戸時代の美しい肉筆浮世絵の展開を時代ごとに辿ることができる。
岩佐又兵衛《弄玉仙図》(重要文化財) 元和期(1615-24)頃 紙本墨画淡彩 一幅 摘水軒記念文化振興財団蔵
第2章「江戸に吹いた新風─異国へのまなざしと博物学」では、異国の動物や西洋の画法を取り入れた絵画を紹介。宅間幸賀の《象図》は、8代将軍徳川吉宗の希望でベトナムからもたらされた象を描いたもの。美人画の名手・山口素絢が外国婦人を描いた《洋美人図》、寺嶋氏が虫食いだらけだった屏風を修復しよみがえった無款《珍禽図》も目を引く。また、司馬江漢に代表される洋風画も数多く展示される。
伊藤若冲《旭日松鶴図》 宝暦5-6年(1755-56)頃 絹本着色 一幅 摘水軒記念文化振興財団蔵
第3章「愉快で愛しき動物たち─いきもの、縦横無尽!」では、身近な生き物を描いた作品が楽しめる。バトル・サイボーグのような石川孟高の《犀図》や、とぼけた目つきに愛嬌がある狩野山雪の《松に小禽・梟図》、ほとんどアンフォルメルのような村瀬太乙《鷺画賛》など、ユーモラスで魅力的な動物画を楽しむことができる。
菱川師宣《美人立姿図》 元禄期(1688-1704) 絹本着色 一幅 摘水軒記念文化振興財団蔵
第4章「物語る動物─瑞獣、霊獣たち」では、実在するかどうかに関わらず、意味を込めて描かれた動物たちを紹介。葛飾北斎の《雪中鷲図》は、摘水軒コレクションの収集の原動力となった傑作で、鷲の湿った質感や表情が印象的。
葛飾北斎《雪中鷲図》 天保14年(1843) 紙本着色 一幅 摘水軒記念文化振興財団蔵
同じ摘水軒コレクションを公開する両展覧会ともに、会場は系統立てての構成が非常に見やすく、もとより質の高い作品一点一点の魅力もさらに際立つ展示となっている。また、作品の合間合間にある「コレクターのことば」がなお、個人コレクションならではの作品への愛しさを伝える。前期後期の細かい展示替えに注意しつつも、豪華2本立ての展覧会をお見逃しなく。
観覧料:一般1,400円(1,120円)、大学生800円(640円)、小・中学生、高校生無料
※障害者手帳をお持ちの方とその介護者1名は無料
※( )内は前売券、および市内在住65歳以上の料金
※前売券は、ミュージアムショップまたはローソンチケット(Lコード:31752)、セブンイレブン(セブンチケット)、千葉都市モノレール「千葉みなと駅」「千葉駅」「都賀駅」「千城台駅」の窓口にて6月27日まで販売(6月28日以降は当日券販売)
◎「岡本秋暉展」と「江戸絵画縦横無尽 摘水軒コレクション名品展」の共通チケット
◎本展チケットで5階常設展示室「千葉市美術館コレクション選」もご覧いただけます
◎ナイトミュージアム割引:金・土曜日の18:00以降は観覧料半額
Comments