東京都美術館開館100周年記念 スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき
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- 1月19日
- 読了時間: 6分
会期:2026年1月27日[火]〜4月12日[日]
開室時間:9時30分~17時30分、金曜日は20時まで(入室は閉室の30分前まで)
休室日:月曜日、2月24日[火]
※ただし2月23日[月・祝]は開室
会場:東京都美術館 企画展示室
展覧会公式サイト https://swedishpainting2026.jp
自然と光、日常のかがやき ― スウェーデン美術黄金期への旅
近年世界的に注目を集める、スウェーデン美術黄金期の絵画。
本展は、フランスでレアリスムを学んだ画家たちが自国の自然や人々、日常を情緒豊かに描いた19世紀末から20世紀のスウェーデンの絵画を、スウェーデン国立美術館の協力のもと紹介し、北欧ならではの感性に迫る展覧会である。

カール・ラーション《カードゲームの支度》1901年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵
Photo: Anna Danielsson / Nationalmuseum
展示は6章構成。第1章は「スウェーデン近代絵画の夜明け」。
スウェーデンでは18世紀に王立美術アカデミーが整備され、フランス式の美術教育が行われたが、19世紀半ば以降はイタリアやドイツ、とくにデュッセルドルフでロマン主義的風景画を学ぶ画家が増え、その影響を受けつつも次第に自国スウェーデンを見つめ直す視点が育まれていった。
ニルス・ブロメールは、北欧神話を題材にスウェーデン独自の芸術を志した画家。《草原の妖精たち》は四季連作の一作として、黄昏の草原で春の妖精が手を取りあい踊る姿を描く。実在の城や薄明の光の表現は、後世のスウェーデン絵画の方向性を示している。

ニルス・ブロメール《草原の妖精たち》1850年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵
Photo: Cecilia Heisser / Nationalmuseum
第2章は、「パリをめざして―フランス近代絵画との出合い」。
1880年代、スウェーデンの若い芸術家たちは旧来の美術教育に反発してパリへ渡り、印象派よりもレアリスムや自然主義に強く影響を受け、ジュール・バスティアン=ルパージュに学びながら、人々や自然を生き生きと明るい光のもとに描く新しい表現を切り開いた。
カール=フレードリック・ヒルはフランス滞在中にバルビゾン派や印象派の影響を受け、明るく澄んだ色彩表現を身につけた。《花咲くリンゴの木》は1877年、セーヌ河畔で制作された果樹画の一つで、満開のリンゴの花を包む柔らかな光と空気感を生き生きと描いている。

カール=フレードリック・ヒル《花咲くリンゴの木》1877年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵
Photo: Erik Cornelius / Nationalmuseum
第3章は、「グレ=シュル=ロワンの芸術家村」。
19世紀リアリズムの実践として戸外制作が重視され、バルビゾン派にならって各地に芸術家のコロニーが形成された。1880年代前半、スウェーデンの画家たちはパリの南東約70キロに位置するグレ=シュル=ロワンに集い、田園生活の中で牧歌的な情景を淡く透明感のある色彩で描いた。
ブリューノ・リリエフォッシュは、自然環境と野生動物の関係を鋭い観察と構成力で描いた。《カケス》では、仲間を追って飛び立つ直前の一瞬を捉え、擬態という動物の生存戦略への関心が表れている。

ブリューノ・リリエフォッシュ《カケス》1886年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵
Photo: Cecilia Heisser / Nationalmuseum
第4章は、「日常のかがやき―“スウェーデンらしい”暮らしのなかで」。
1880年代末、フランスで活動していたスウェーデンの芸術家たちは、郷愁と都市生活への疲れに加え、「スウェーデンらしい新たな芸術」を創造したいという思いから帰国した。帰国後は、自国の日常や身近な人々、失われゆく民俗文化を、親しみやすく率直な表現で描くようになった。
アンデシュ・ソーンは国際的に活躍した北欧の画家で、帰郷後は故郷ダーラナ地方の人々や民俗文化を主題とした。本作《故郷の調べ》は晩年の作で、民俗衣装をまといリュートを奏でながら歌う女性の気高い姿を描いている。

アンデシュ・ソーン《故郷の調べ》1920年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵
Photo: Viktor Fordell / Nationalmuseum
カール・ラーションの《カードゲームの支度》は、妻カーリンと築いた家庭生活を主題とし、カード遊びの準備をする家族の温かな団らんを描いている。冬の戸外と対照的に、室内を照らすオイルランプとろうそくの灯りが幸福な家庭の雰囲気を強調している。
なお、東京会場のみの出品として、ラーションの代表作『ある住まい』(Ett Hem)の原画が特別展示されることも楽しみだ。

カール・ラーション《キッチン(『ある住まい』より)》 1894-1899年 水彩、紙 スウェーデン国立美術館蔵
Photo: Bodil Beckman / Nationalmuseum ※東京会場のみ出品
第5章は、「現実のかなたへ―見えない世界を描く」。
フランスから帰国した一部のスウェーデン画家は、客観的描写よりも感情や内面の表現を重視するようになった。この傾向は合理主義への反動として象徴主義と呼応し、宗教や文学、歴史などを題材に内面的世界や、風景画においてスピリチュアルな雰囲気を象徴的に描いた。
19世紀北欧を代表する小説家・劇作家のアウグスト・ストリンドバリは、精神的危機の中で絵画制作に没頭し、本作《ワンダーランド》では制作過程の偶然性に委ねた実験的表現によって、光と闇の対立や内面世界を象徴的に描き出している。

アウグスト・ストリンドバリ《ワンダーランド》1894年 油彩、厚紙 スウェーデン国立美術館蔵
Photo: Erik Cornelius / Nationalmuseum
最終第6章は、「自然とともに―新たなスウェーデン絵画の創造」。
1890年代以降、スウェーデンの風景画は、自国の森林や湖などの自然を新たに見出し、その表現方法を模索する大きな転換期を迎えた。画家たちはゴーガンの影響も受けつつ、北欧特有の夕暮れや薄明の繊細な光を描き、叙情性豊かな独自の風景表現を確立した。
グスタヴ・フィエースタードはスウェーデンの冬景色を得意とし、《冬の月明かり》では樹霜に覆われた雪深い森を装飾的な筆致で描いている。彼の作品は装飾性が高く、下絵が妻のマイヤが仕立てるタペストリーに展開されることもあった。

グスタヴ・フィエースタード《冬の月明かり》1895年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵
Photo: Hans Thorwid / Nationalmuseum
エウシェーン王子はスウェーデン絵画黄金期を代表する風景画家で、本作《静かな湖面》は1890年代に始まるナショナル・ロマンティシズムを象徴する作品である。北欧の夏の夜に特有の薄明の光が静かな風景に永遠性を与えている。

エウシェーン王子《静かな湖面》1901年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵
Photo: Anna Danielsson / Nationalmuseum
本展は東京都美術館開館100周年記念展の第一弾にして、「日本・スウェーデン文化科学交流年2026」の事業。
100%スウェーデンの絵画に特化した構成により、近代に新たな表現を切り拓いた芸術家たちのまなざしをぜひ体験してほしい。
観覧料(税込)
当日券 一般 2,300円(2,100円)/ 大学生・専門学校生 1,300円(1,100円)/ 65歳以上 1,600円(1,400円)
・( )内は前売料金。前売券は2025年11月28日(金)~2026年1月26日(月)までの販売(予定)
・18歳以下、高校生以下は無料。
・1月27日(火)〜2月20日(金)までの平日のみ、大学・専門学校生は無料。
・毎月第3土曜日・翌日曜日は家族ふれあいの日により、18歳未満の子を同伴する保護者(都内在住、2名まで)は一般通常料金の半額(住所のわかるものをご提示ください)。日時指定予約不要、販売は東京都美術館チケットカウンターのみ。
・身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)は無料。
・18歳以下、高校生、大学生・専門学校生、65歳以上の方、各種お手帳をお持ちの方は、いずれも証明できるものをご提示ください。




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