表装 ―肉筆浮世絵を彩る
- ldq03330
- 3月12日
- 読了時間: 5分
会期:2026年3月6日[金]~29日[日]
開館時間:10時30分~17時30分(入館は17時まで)
休館日:月曜日 (3月16日、23日は休館します)
会場:太田記念美術館
本邦初の肉筆浮世絵による表装展!!
太田記念美術館所蔵の肉筆浮世絵約600点から厳選された約40点により、
脇役とされがちな表装に光を当てる。
「表装」とは、絵画や書を裂地や紙で掛軸や巻物に仕立て、保存・鑑賞を可能にする技術であり、展覧会で解説されることや図録に掲載されることもあまりないものの、作品を引き立てる重要な役割を担っている。
本展では、表装文化の研究者・濱村繭衣子氏の監修のもと、太田記念美術館所蔵の肉筆浮世絵約600点の中から、優れた表装を伴う約40点を厳選し、脇役とされがちな表装に光を当ててその魅力を紹介する。

宮川一笑 吉原正月の景 寛保~宝暦2年(1741~52)頃 紙本1幅
表装は色や模様によって絵の印象を大きく左右する重要な要素である。
宮川一笑「吉原正月の景」は、小袖裂の中廻しや萌黄色の上下、朱塗りの軸先など華やかな表装によって正月の情景を引き立て、肉筆浮世絵ならではの自由で艶やかな趣を示している。会場では、本作の隣に並ぶ格調高い伝統的な裂を用いた大名注文の“天童広重”三幅対の表装と対照をなして興味深い。

勝川春章 桜下詠歌の図 天明(1771〜89)頃 絹本一幅
江戸時代以降の表装には、発達した服飾文化を背景に多様な裂地が用いられた。
「桜下詠歌の図」は、当時大名家にも愛された勝川春章の美人画。本作では中廻し上に配された松川菱文様の裂が、濱村氏の調査によって能装束であることが判明。品格ある作品に格式高い裂を合わせた見事な表装の妙が浮かび上がる。能装束が表装に用いられる例は稀で判別も難しいだけに、旧蔵者も明らかなこの一幅は、誰がこの取り合わせを考えたのかと想像をかき立てられる魅力をもっている。

喜多川歌麿 美人読玉章図 寛政(1789〜1801)中期 絹本1幅
更紗は、木綿に草花などを手描きや型で染めた華やかで愛らしい裂であり、その軽やかな風情から美人画の表装として好んで用いられてきた。とりわけ歌麿の「美人読玉章」は金更紗と合わせることで美しさがいっそう引き立ち、輪郭線に施された金が角度によって光を帯びる様子と相まって、作品の魅力をより印象深いものにしている。

古山師重 隅田川両国橋之景 貞享〜元禄期(1684〜1704)頃 絹本1幅
菱川師宣の高弟・古山師重による「隅田川両国橋之景」は、まだのどかな風情を残す隅田川の景を描いた古雅な一幅であり、中廻しには川面に遊ぶ愛らしい水鳥の刺繍が施されて、隅田川ゆかりの都鳥(ユリカモメの雅称)を思わせる趣を添える。さらに上下の浮き上がる薔薇文様が水色の裂を爽やかに引き立て、画中の穏やかな情景と響き合う魅力的な表装となっている。

勝川春章 花魁図 寛政元〜4年(1789〜92)頃 絹本一幅
勝川春章の「花魁図」は、打ち掛けの孔雀の羽模様が中廻しの裂と美しく響き合い、作品に添えられた「肘だけでも人目を引く美しい姿」という言葉からも、表装を考えた人物が本紙の遊女の姿に深く心を奪われたことがひしひしと伝わってくる一幅である。

歌川国貞 七代目市川団十郎の暫 文政13年(1803)頃 絹本1幅
肉筆浮世絵の表装には、市川団十郎に三升、沢村源之助に観世水と、役者にちなむ意匠を取り入れるなど、ファン心をくすぐる工夫を凝らしたものもある。お気に入りの作品をより美しく飾ろうとする所蔵者の愛情が感じられる表装も紹介される。
歌川国貞の「七代目市川団十郎の暫」では、一文字や風帯にさりげなく金であしらわれた三升紋が本紙と呼応し、中廻しは団十郎茶を思わせる色でまとめられ、「推しを飾る」という熱い思いが表装からも伝わってくる。
一方、鳥居清長の同じテーマの「暫図」は朱の紙や萌黄と紫の更紗を用いた個性的な表装で、本紙への深い愛情や思い入れが強く感じられ、作例が少ないという清長の肉筆役者絵の中から繊細な筆遣いや息遣いまでもが伝わってくるようだ。表装を通して制作者や愛好者の熱い思いが生き生きと伝わり、現代の私たちにも共感を呼び起こす。

葛飾北斎 源氏物語図 文化(1804〜18)中期頃 絹本1幅
北斎の「源氏物語図」がビゲロー旧蔵であることは知られていたが、このたび濱村氏によって「三都遊女図」の中廻しが同じ裂であることが発見された。この特徴的な裂の共通使用は、少なくとも同じ所蔵者が両作品を手に入れ大切にしていた可能性を強く示している。作品が時を経て人々に愛でられ、受け継がれてきた道のりを表装から想像すること──それは作品そのものだけでなく、表装からも深い喜びを味わうことができるということだ。
本展では、勝川春章、喜多川歌麿、葛飾北斎など巨匠の優品を紹介すると同時に、これまでに紹介されていなかった作者や作品も、表装という観点から新たに発掘されていることも見どころ。非常に多様な肉筆浮世絵作品を表装の鑑賞ポイントとあわせて見ることで、その魅力をより深く味わえる内容となっている。
【観覧料】
入場料:一般 1000円 / 大高生 700円 / 中学生(15歳)以下 無料
本館では入館のための日時指定予約を行っておりません。
ご希望の日時にお越しください。
当館は現金のみのお取り扱いです。クレジットカードやQRコードでの決済はできません。
*中学生以上の学生は学生証をご提示下さい。
*10名以上のグループ、団体での来館をご検討の場合は〈ツアーガイド及びご引率の皆様へ〉をお読みいただき必ず事前にご連絡をお願いいたします。(混雑時に事前連絡なくご来館の団体、グループのお客様は、ご入館をお断りさせて頂くことがございますのでご了承下さい。)
*障害者手帳提示でご本人とお付き添い1名さま100円引き。
*その他各種割引についてはお問い合わせください。
*料金は消費税込み。
*当館は現金のみのお取り扱いです。クレジットカードやQRコードでの決済はできません。




コメント