開館30周年記念 ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン所蔵 ロックフェラー・コレクション花鳥版画展 北斎、広重を中心に
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- 1月23日
- 読了時間: 6分
会期:2025年1月17日[土]~ 3月1日[日]
開館時間:10時~18時(金・土曜日は、20:00まで) ※入場受付は閉館の30分前まで
休室日:月曜日(2月23日をのぞく)、2月24日[火]
会場:千葉市美術館
【同時開催】
■うるわしき摺物—縁をつむぐ浮世絵
2026年1月17日[土] – 3月1日[日]
■千葉市美術館コレクション選
開館30周年記念特集展示 田中一村《アダンの海辺》と新収蔵作品/没後20年 ドラッカーコレクションと山水画/小泉癸巳男《昭和大東京百図絵》
2026年1月7日[水] – 2月1日[日]
■つくりかけラボ
小森はるか+瀬尾夏美|へびと地層 風景から生まれる物語
2025年10月11日[土]-2026年1月25日[日]
モダン・レディが恋した可憐な花鳥版画に、日本情趣の受容を見る
花や鳥の美しさと季節の移ろいを生き生きと描いた花鳥版画は、北斎や広重の時代に花開いた、親しみあふれる浮世絵の世界だ。
本展では、アメリカの名門ロックフェラー家のアビー・オルドリッチ・ロックフェラー夫人(1874–1948)が、愛情を込め独自の美意識で収集したRISD美術館所蔵の花鳥版画コレクションから、厳選した163点を紹介する。

歌川広重《雪中椿に雀》大判短冊錦絵 天保3-6年(1832-35) RISD美術館蔵
Courtesy of the Museum of Art, Rhode Island School of Design, Providence
Gift of Mrs. John D. Rockefeller, Jr.
会場では、35年ぶりに日本へ里帰りする可憐で味わい深い作品の数々を通して、多彩な花や鳥、広重や北斎を中心に絵師たちの表現の違いを楽しみながら、アビーのまなざしを通して、日本で生まれアメリカで大切に受け継がれてきた花鳥版画の魅力と、心和む豊かな時代の空気を存分に味わうことができる。
第2章「広重花鳥版画の華ー大短冊判花鳥版画を中心に」には、歌川広重《雪中椿に雀》の摺りの早いものと後版が並んで展示されているが、上図版は後版。後版は背景に雪を降らせ青色のぼかしを施している。若狭屋の版元印があり、降雪する背景を灰色のぼかしにする作例もある。版元が佐野屋喜兵衛に変わると、降雪する背景が灰色一色でぼかしが消える。幾度も摺り重ねられた人気作とわかる。

葛飾北斎《「鷽 垂桜」》中判錦絵 天保5年(1834)頃 RISD美術館蔵
Courtesy of the Museum of Art, Rhode Island School of Design, Providence
Gift of Mrs. John D. Rockefeller, Jr.
花鳥画は、流行にとらわれない画題として長らく描かれてきたが、江戸時代末期の天保年間に版画として出版された北斎による花鳥版画が流行し、そこから庶民まで楽しむようになった。
その後多くの浮世絵師が花鳥版画を手掛けたが、なかでも広重は随一の作画量を誇り、本展では110点の作品を鑑賞することができる。
第3章「北斎と北斎派の花鳥版画」に展示されている葛飾北斎《「鷽 垂桜」》は、画面左上から右下へ弧を描きながら垂れる桜の枝に一羽の鶯が頭を下にして止まっている、奇抜な構図。濃い藍色の背景に可憐な桜の花や鶯の喉元の赤色が映えている。

伊藤若冲《雌雄鶏図》木版彩色摺 江戸時代 RISD美術館蔵
Courtesy of the Museum of Art, Rhode Island School of Design, Providence
Gift of Mrs. John D. Rockefeller, Jr.
第5章「詩歌と絵を楽しむ 広重の短冊判花鳥画」に展示される伊藤若冲《雌雄鶏図》は、他に所在が知られておらず、確認される唯一の判。江戸時代の紙として間違いなく、若冲版画の多くに用いられた拓版(正面摺か)による背景の黒色、墨線の掠れ等、筆致の勢いが意識された主版のあり方、錦絵時代になっても京では長く行われた合羽摺による彩色が鶏の赤い部分に施されているなど、江戸の浮世絵版画にはない特徴からも本物と判断されたという。日本初公開となる本作も見逃せない。

葛飾北斎《露草に鶏》団扇絵判錦絵 天保3年(1832)頃 RISD美術館蔵
Courtesy of the Museum of Art, Rhode Island School of Design, Providence
Gift of Mrs. John D. Rockefeller, Jr.
希少かつ多様な判型の花鳥版画が楽しめるのが、第4章「季節の風情「団扇絵」」の名品」。
団扇の骨に貼るために制作された浮世絵版画である「団扇絵」や、小さな掛軸として家の柱などに貼られた「柱絵」など、実際に使用されていたため残存数が少ないもののほか、非常に珍しいものとして、裁断する前の状態のものや、現存自体が希少な下絵も見ることができる。
葛飾北斎《露草に鶏》は、明るい藍色の背景と深い藍色の露草を配し、寄り添う雌雄の鶏と雛を描いた作品で、藍と赤いとさかとの鮮やかな対比や、雄鳥の体色に墨の上から青を重ねるなど緻密な配色の工夫が際立っている。

歌川広重《烏瓜に目白/芍薬に小鳥》中短冊判錦絵 天保3-6年(1832-35)頃 RISD美術館蔵
Courtesy of the Museum of Art, Rhode Island School of Design, Providence
Gift of Mrs. John D. Rockefeller, Jr.
会場では、アビーの収集の軌跡をたどる展示も見どころ。彼女が最初に手にした花鳥版画である歌川広重《水葵に鴛鴦》、《紫陽花に川蝉》にはじまり、「部屋を花鳥版画で飾る」というアビーの残した言葉通り、花鳥版画に囲まれた暮らしを想像させる空間が広がっている。
第6章「小さく愛しき花と鳥」で見られる歌川広重《烏瓜に目白/芍薬に小鳥》は、実は上下で切られ別々に販売されるはずだった二図。上図の秋の景物の烏瓜に、所狭しとひしめく緑色の目白。下図の句は芍薬に20日間咲きたいという欲はないという意で、移ろいゆくものの美しさを表している。

歌川広重《月に雁》中短冊判錦絵 天保3-6年(1832-35)頃 RISD美術館蔵
Courtesy of the Museum of Art, Rhode Island School of Design, Providence
Gift of Mrs. John D. Rockefeller, Jr.
ひとりの女性の好みと情熱によって形成されたコレクションをたどることは、アメリカ人に日本の花鳥版画がどう評価されたか、それが寄贈されてからはアメリカの社会や人々にどのような影響を及ぼしたか、アメリカにおける日本の浮世絵版画の受容史を見ることにもなるだろう。
この特別展と合わせて、「うるわしき摺物—縁をつむぐ浮世絵」と「千葉市美術館コレクション選」(開館30周年記念特集展示 田中一村《アダンの海辺》と新収蔵作品/没後20年 ドラッカーコレクションと山水画/小泉癸巳男《昭和大東京百図絵》)もぜひ堪能されたい。2026年の幕開けを飾るにふさわしい、豪華すぎるラインナップに魅入られてしまうことだろう。
観覧料
一般1,800円(1,440円)、大学生1,200円(960円)、小・中学生、高校生無料
※障害者手帳をお持ちの方とその介護者1名は無料
※( )内は前売券、団体20名以上、および市内在住65歳以上の料金
※前売券は、ミュージアムショップまたはローソンチケット(Lコード:35580)、セブンイレブン(セブンチケット)、千葉都市モノレール「千葉みなと駅」「千葉駅」「都賀駅」「千城台駅」の窓口にて1月16日まで販売(1月17日以降は当日券販売)
◎ナイトミュージアム割引:金・土曜日の18:00以降は観覧料2割引
◎本展チケットで5階常設展示室「千葉市美術館コレクション選」もご覧いただけます。




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