会期:2023年9月30日[土]〜 24年2月25日[日]
開館時間:11時〜18時(最終入館17時)
休館日:月曜日(祝日の場合、翌火曜日休館)
会場:WHAT MUSEUM 2F
入場料:一般/1,500円 大学生・専門学校生/800円 高校生以下/無料
※同時開催の展覧会の観覧料を含む
※チケットはオンラインにて事前購入可能
若きコレクターの感性が迸る、現代アートと家具のコレクション
IT分野で活躍するコレクター・竹内真が収集した現代アートと家具の作品を中心に紹介する展覧会。
これまで同館でコレクション展が開催されてきた高橋龍太郎や桶⽥俊⼆・聖⼦夫妻、大林剛郎らと比べると、比較的若くコレクション年数も短い(約5年前という)のが特徴。本展の企画担当者は「より身近に感じられるコレクター」と語る。会場には、国内外のアーティストによる現代アートの作品33点と、ル・コルビュジエやピエール・ジャンヌレなどがデザインした家具33点が展示されている。
エントランスでまず目に入るのは、竹内にとって「記念すべき作品」の3点。竹内がネットオークションで購入して1点目の作品となったパブロ・ピカソの晩年のエッチング作品《Couple, from La Magie Quotidienne》(1968)、若手アーティストを支援する思いで購入した初めてのプライマリー作品である大久保紗也の絵画《nothing(man)》(2018)、作品の美の世界に魅せられたという神楽岡久美の立体作品《Extended Finger No,02》(2022)だ。
その奥のHALLエリアには、ピエール・ジャンヌレがデザインした21脚の椅子からなるインスタレーションを展示。椅子の機能美だけでなく、構造や特徴を全方向から見ることができる工夫は、強い存在感を放つ。インド独立に関連して1950年代に始まったチャンディガール都市計画のためにデザインされたこれらの椅子は、大量生産を推進するために、地元の職人が図面を参考に製作をした。そのため個々の椅子からは、手書きの管理番号などを含めた微妙な差を味わうことができる。
左よりセクンディノ・ヘルナンデス《Untitled》、ヴィルヘルム・サスナル《Untitled》、 許寧《Starting with a Tear - HISTORY》、シャルロット・ぺリアン《カサンドー用収納付きローベンチ(モーリタニア)》 WHAT MUSEUM 展示風景 TAKEUCHI COLLECTION「心のレンズ」展 Photo by Keizo KIOKU
左より大山エンリコイサム《FFIGURATI #133》、サイトウマコト《Face Landscape 2021_02》、山口歴《SHADEZ OF BLUE NO.2》 WHAT MUSEUM 展示風景 TAKEUCHI COLLECTION「心のレンズ」展 Photo by Keizo KIOKU
SPACE3では、竹内が近年魅かれているという抽象絵画の部屋となっている。山口歴(やまぐち・めぐる)が平面のアルミ板にストロークを表現した《SHADEZ OF BLUE NO.2》(2022)や、顔力に興味を持ちその狂気を表現したサイトウマコトの《Face Landscape 2021_02》(2020-2021)、面相筆による緻密さと涙のように絵の具がこぼれ落ちる大胆な描写とを両立させ、そこに過去の絵画の人の目を入れ込むことで涙の歴史ー愛を表現した北京出身の許寧(シュ・ニン)の絵画《Starting with a Tear - HISTORY》(2023)、カメラで撮影した映像やインターネットなどで見つけた画像を独自のトリミング手法を用いて描いたポーランド出身のヴィルヘルム・サスナルの《Untitled》(2022)などを楽しむことができる。会場中央のシャルロット・ペリアンのベンチに座ってじっくりと作品を鑑賞できることも嬉しい。
SPACE4は、家具と現代アートによる共有空間。竹内は「家具は現代アートとの距離を縮めてくれる」と語る。ジャンヌレのデザインのアームチェアとローテーブルに、ゲルハルト・リヒター、イヴ・クラインの作品が組み合わされた一角がある。
奥側の書斎を思わせる空間では、ル・コルビュジエやピエール・ジャンヌレ、ジャンプルーヴェ、シャルロット・ペリアンらによる家具が、フランシス・アリス、三島喜美代、元永定正、二代 田辺竹雲斎、上田勇児、リー・キット、浜名一憲らの工芸を含めた作品とあわせて配置されており、大きな作品だけでなく小さな作品も愛するという竹内の時空を超えた感性を彷彿させる展示となっている。
同スペースではオスカー・ムリーリョやスターリング・ルビーによる力強い抽象絵画や、今年8月に世を去ったミニマリスト運動の先駆者・桑山忠明の作品、桑山と親交のあったドナルド・ジャッドのエッチング作品なども展示。
続くSPACE5では、キャンバスがフレームをはみ出して行くような勢いのある小林正人の絵画《この星のモデル(ペア)》(2021)や、自然や女性の身体からインスピレーションを得て力強くも美しい曲線美を追及したオスカー・ニーマイヤーのロッキングチェア、さらに掛井五郎、加藤泉、小西紀行の作品が紹介されている。
「心のレンズ」展というタイトルは、竹内自身が考えたもの。見る人の心のなかにある記憶や経験によって見えてくる風景も違うという意味で、竹内は「複数人で話し合いながら、見えなかったものが見えてくるようになるのは抽象絵画の力だと思い、本展はそのような機会になれば」と語っている。今後さらに成長し変化していくであろうTAKEUCHI COLLECTIONの現在の姿を通して、作品の新たな魅力やコレクションすることの楽しみ方を発見する機会になることだろう。
WHAT MUSEUMでは、古代建築から現代建築そして月面構造物まで、40点以上の構造模型を展示する「感覚する構造 - 力の流れをデザインする建築構造の世界 -」を同時開催。同館が運営する、600点以上の建築模型を保管・展示する「建築倉庫」も楽しむこともできる。
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