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森美術館開館20周年記念展 私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために

会期:2023年10月18日[水]~2024年3月31日[日] ※会期中無休
開館時間:10時~22時 ※火曜日のみ17時まで

           ※ただし3/19[火]は22時まで

           ※最終入館は閉館時間の30分前まで


会場:森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)

エミリヤ・シュカルヌリーテ《時の矢》 2023年 ビデオ・インスタレーション 16分



34人の現代アーティストたちは、環境危機にどう向き合うのか?


 産業革命以降、特に20世紀後半に人類が地球に与えた影響は、それ以前の何万年もの地質学的な変化と同じぐらい大きかったと言われている。この大きな地球規模の環境危機は、各国がそれぞれ独自でたくさんの問題や出来事に巻き込まれてきた結果と言えそうだ。そこから、この展覧会は生まれた。

 本展は、国内外の34人のアーティストによる歴史的な作品から新作まで、様々な表現の作品を4つの章に分けて紹介する。現代アーティストはこの未曾有の危機にどう反応するのだろう?


ハンス・ハーケ《海浜汚染の記念碑》(《無題》1968-1972/2019年の部分) 1970年 デジタルCプリント 33.7×50.8 cm Courtesy: Paula Cooper Gallery, New York © Hans Haacke / Artists Rights Society (ARS), New York


ニナ・カネル 《マッスル・メモリー(5トン)》(部分) 2023年  オホーツク海の海生軟体動物の殻 サイズ可変 Courtesy: Barbara Wien, Berlin; kaufmann repetto, Milan and New York 展示風景:「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」 森美術館(東京) 2023-2024年 撮影:木奥惠三 画像提供:森美術館


 第1章では、「全ては繋がっている」と題し、環境や生態系と人間の活動がどれほど複雑に絡み合っているかを考える。

 本展で言う「エコロジー」は、単に「環境」だけではない。地球上のあらゆる生物や非生物は、ある種の循環の一部であり、その循環を通して地球上の全てが繋がっている。最初の章では、このような循環や繋がりを様々な形で表現する現代アーティストたちの作品を紹介する。たとえば、ハンス・ハーケの、社会や経済のシステムと、動物や植物などの生態系とをつなぐ視点で撮影された記録写真の展示や、貝殻という有機物がセメントなどの建材に変換されるプロセスを来場者自身に追体験させるニナ・カネルの大規模なインスタレーションは、私たちが広大で複雑に絡み合う循環(エコロジー)の中にあることを想起させてくれることだろう。


桂 ゆき《人と魚》 1954年 油彩、キャンバス 116×90.8 cm 所蔵:愛知県美術館


 第2章「土に還る」では、1950~80年代の日本で環境汚染が問題視された時期に制作されたアートを再検証し、日本の状況から環境問題を見つめ直す。

 日本は戦後、急速な経済成長の時期に、自然災害や工業汚染、放射能汚染などの深刻な環境問題に直面した。この章では、1950年代以降の日本のアーティストたちが環境に焦点を当てた作品や活動を通して、社会と美術史をエコロジーの視点から解釈している。時系列で50年代から80年代までを見ながら、各時代における代表的な表現方法の変遷を考察する。


鯉江良二《土に還る(1)》 1971年 シェルベン(衛生陶器を粉末にしたもの) 32×50×50 cm  所蔵:常滑市(愛知) 撮影:怡土鉄夫


 たとえば、桂ゆきの1954年の絵画作品《人と魚》では、ビキニ環礁での第五福竜丸被爆事件を取り上げている。中西夏之の《コンパクト・オブジェ》(1966/1968年)では、日用品を卵型のアクリル樹脂に詰め込んだ作品が注目される。鯉江良二の1971年の《土に還る》では、土を素材に使い原爆や反原発をテーマにしており、作家自身の顔が崩れ土に還る姿が表現されている。また、谷口雅邦は1980年代に制作した生け花を再現展示し、自然と人間との関係性を表現している。


モニラ・アルカディリ《恨み言》 2023年 FRP、自動車用塗料、サウンド サイズ可変 音楽:ファティマ・アルカディリ 展示風景:「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」 森美術館(東京) 2023-2024年 撮影:木奥惠三 画像提供:森美術館


 第3章「大いなる加速」では、人類が地球資源を過度に開発することの影響を示しながら、同時に「希望」を提案する作品も紹介する。

 人類は長い間、地球の資源を駆使して文明を進化させ、工業化やグローバル化を推し進めてきた。ただし、産業革命以降、急速な科学技術と産業の進歩により、「人新世」という地質学上の区分が議論されているように、地球の環境が短期間で大きく変わる。この章では、人類にとって急務の問題を厳しく分析し、文化や歴史の背景を取り入れた作品を通して、地球資源と人間の関係を広い視野から再評価する。


保良 雄《fruiting body》 2022年 インスタレーション 展示風景:Reborn-Art Festival 2021-22:利他と流動性 [後期] 撮影: 齋藤太一 ※参考図版


 モニラ・アルカディリの新作では、養殖真珠をテーマにし、人間の欲望や夢が自然の生態系にどれだけ影響を与えているかを表現している。また、保良雄の展示では、何億年もの時間をかけて形成された大理石とゴミを高温で溶解したスラグを並べて、異なる時間の経過を示している。これに加えて、古代の神話から個人的な経験、社会問題、環境危機まで、各作品が地球資源と人類の多様な関わりを示唆している。


西條 茜《果樹園》 2022年 陶 130×82×82 cm 展示風景:「Phantom Body」

アートコートギャラリー(大阪)2022 年 撮影:来田 猛


 最終章である第4章「未来は私たちの中にある」では、アクティビズム、先住民の知恵、フェミニズム、AIや集合知、精神性など、様々な表現を通じて未来の可能性を描く。

 環境危機は、私たちが行った「選択」の結果である。現状を変えるためには、私たち人間が考え方を変える必要がある。未来にはどんな選択肢があるのか、この章ではさまざまな視点から考えを広げていく。非西洋の視点を尊重する作品、成長の終わりに疑問を投げかけるモダニズム、アクティビズム、先住民やフェミニズム、精神性(スピリチュアリティ)、デジタル・イノベーションがもたらす可能性やリスクなど、様々な知恵を取り入れながら、地球の未来を再考する。


マルタ・アティエンサ《漁民の日2022》 2022年 ビデオ、サイレント 45分44秒(ループ) 制作協力:ハン・ネフケンス財団、モンドリアン財団、シェーン・アケロイド コミッション:第17回イスタンブール・ビエンナーレ Courtesy: Silverlens, Manila/New York


 アグネス・デネスは1982年、ニューヨークのマンハッタンに麦畑を作り、それによって開発主義に疑問を投げかけた。ジェフ・ゲイスは六本木ヒルズのコミュニティと協働して、雑草が癒しをもたらす存在として再評価されるプロジェクトを進めている。また、西條茜の陶器は複数の人が共有し演奏する楽器のようで、新しい共生の可能性を示唆している。イアン・チェンの作品では、AIシミュレーションの亀「サウザンド」が生き残るためにさまざまな条件に応じ、変化に対応しながら進化していく。


アサド・ラザ《木漏れ日》 2023年 修復された天窓、日光、足場、シルヴィー・セマ・グリッサンによるサウンドスケープ プロデューサー:オリヴィア・フェアウェザー 足場設計:渡邉啓太 足場製作:おだわら名工舎 特別コンサルタント:イザベル・オリヴィエ 協力:Black Cat Daydream(京都) 展示風景:「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」森美術館(東京)2023-2024年 撮影:木奥惠三 画像提供:森美術館


 この展覧会のタイトル「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」は、私たちが誰であり、地球環境が誰のものなのかという問いかけだ。人間中心だけでなく、地球を大局的に見ると、様々な生態系が存在することに気づくことだろう。本展では、環境問題などの様々な課題に対して多様な視点で考えることを提案する。また、輸送を最小限にし、資源を再生利用するなどサステナブルな展覧会制作を通じて、現代アートやアーティストがどのように環境危機に関わり、考えるかについて対話を促進し、美術館を対話が生まれる場とする。



料金


※専用オンラインサイトでチケットを購入すると(  )の料金が適用されます。

※音声ガイド付チケット(+500円)も販売しています。


[平日]

一般 2,000円(1,800円)

学生(高校・大学生)1,400円(1,300円)

子供(4歳~中学生)800円(700円)

シニア(65歳以上)1,700円(1,500円)


[土・日・休日]

一般 2,200円(2,000円)

学生(高校・大学生)1,500円(1,400円)

子供(4歳~中学生)900円(800円)

シニア(65歳以上)1,900円(1,700円)


※本展は、事前予約制(日時指定券)を導入しています。

 専用オンラインサイトから「日時指定券」をご購入ください。

※専用オンラインサイトはこちら。

※当日、日時指定枠に空きがある場合は、事前予約なしでご入館いただけます。

※2023.12.30(土)~2024.1.3(水)は[土・日・休日]料金となります。

※表示料金は消費税込


お問い合わせ

050-5541-8600(ハローダイヤル)

 
招待券プレゼント
読者アンケート「私たちのエコロジー展で期待するアーティスト」を添えてWeb美庵編集部宛、メールにてご応募ください(LDQ03330@nifty.com)。抽選で5組10名様に招待券をプレゼントいたします。なお、当選は発送をもって代えさせていただきます。
 

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