©2023『春の画 SHUNGA』製作委員会 「袖の巻」鳥居清長・画(浦上蒼穹堂)
春画は女性の幸福のためにあった!!
春画の知られざる魅力に迫るドキュメンタリー!!
©2023『春の画 SHUNGA』製作委員会
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江戸時代の著名な浮世絵師たちが情熱を傾け、高度な技術で作り上げた「美」と「技」に溢れた春画は、超一級の芸術作品の数々を生み出した。ここ10年ほどで春画は、「男の欲望のはけ口のためにある」という誤解を打ち消し、「性別を問わず大人が笑って鑑賞するもの」として世界の人に受け容れられてきた。このドキュメンタリー映画「春の画 SHUNGA」(はるのえ しゅんが)によって春画は、本来のあるべき真の姿を完全に取り戻したと言ってよいだろう。
2013年、ロンドンの大英博物館で初の大規模な春画展が開催され、多くの人々が訪れたが、その半数以上が女性だった。さらに、2015年から2016年にかけて、東京(永青文庫)と京都(細見美術館)で初の日本の「春画展」が開催され、29万人以上の人々が訪れた際も、約半数が女性だった。
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「春情肉婦寿満」歌川国貞・画(春画ール)
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「歌満くら」喜多川歌麿・画(浦上蒼穹堂)
そして、このドキュメンタリー映画「春の画」の中で最も印象的な言葉は、「春画は元々女性の幸福のために存在した」ものであり、「明治以降に隠されてきた事実も私たちは知る必要がある」というもの。映画中には、多くの女性が登場し、研究者、コレクター、アーティストなどが春画について自由かつ熱烈に語る。特に、江戸木版画の摺り技術を継承し、喜多川歌麿の「歌満くら」を見事に再現した高橋由貴子のシーンは印象的で、その制作過程が詳細に追跡されている。陰毛のちぢれの微細なディテールにこだわり、版木を削る音が耳に刻まれる。
現代のイケメンを描くことで知られる日本画家・木村了子は、観客から「上村松園は自分の性器を描いたのだから、あなたももっと自分をさらけ出さなくては」と言われたというエピソードを語る。
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「歌満くら」喜多川歌麿・画(浦上蒼穹堂)
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「好色図会十二候」勝川春潮・画(浦上蒼穹堂)
江戸時代は女性が少なく、三行半も女性の方から男に突きつけるものだったとされる。とはいえ、女性は子供を生む義務と生死に関わるプレッシャーにさらされ、女性の生きにくさは厳然としてあった。子どもが授かることは特別で不思議なことであり、ありがたいことだったために、死の対極としての生の象徴、性や生殖器を祀る必要があった。大名は嫁入り道具に豪華な肉筆巻物を持たせ、武家屋敷に出入りする貸本屋の春画は女中たちが借りて回覧していた。春画には多くの異なる情熱や人間ドラマが描かれ、性愛だけでなく、そこに描かれる女性の表情に象徴される幸福、興奮、悲哀、嫉妬、ユーモアなど、生の魅力が表現されている。
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「四季画巻」月岡雪鼎・画(Michael Forniz)
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美しい映像は、いまだ知られざる部分も多い春画の深遠なる魅力にあらゆる角度から迫り、その奥深くへと観客をいざなう。北斎の有名な“蛸と海女”の絵、歌麿の「歌満くら」、鳥居清長の「袖の巻」、鈴木春信のユーモラスな「風流艶色真似ゑもん」、大名家への嫁入り道具と伝えられる華麗な肉筆巻物、ヨーロッパのコレクター秘蔵の衝撃的な勝川春英「春画幽霊図」などなど、バラエティーに富んだ傑作の数々。さらには贅を尽くした源氏物語のパロディー「正写相生源氏」(歌川国貞)の絢爛豪華な“極初摺り”も登場! また、復刻やデジタル化などのプロジェクトを紹介。没入感を味わえる春画のアニメ化も必見だ。
©2023『春の画 SHUNGA』製作委員会
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この映画は、単に男性目線で語られてきた春画を女性目線で語り直すといった、安易な相対・教条主義に陥ることなく、横尾忠則や会田誠など、男性やマイノリティの視点を絡めてフラットな価値と文脈を提示している点に秀逸さがある。ありのままの人の営みを「大人の秘め事」として楽しむ文化に蓋をしようとする滑稽さをも笑う。エロティシズムだけではない、 多彩な表現内容、技巧、 その創造性を通じて 「性」と「生」を発見する 驚きのドキュメンタリー映画が誕生した。
■出演:横尾忠則 会田 誠 木村了子 / 石上阿希 早川聞多 浦上 満 アンドリュー・ガーストル ミカエル・フォーニッツ 橋本麻里 朝吹真理子 春画ール ヴィヴィアン佐藤 樋口一貴 高橋由貴子 山川良一
■朗読:森山未來 吉田 羊
■監督:平田潤子
■配給:カルチュア・パブリッシャーズ
【2023/日本/カラー/ビスタサイズ/5.1ch/121分/デジタル/R18+】
■公式ウェブサイト: www.culture-pub.jp/harunoe/
2023年11月24日[金]〜
シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー