人に寄り添うデザインの誕生を支えたのは、
最初の妻アイノだった……!!
不朽の名作として名高い「スツール60」、アイコン的アイテムと言える「アアルトベース」、そして自然との調和が見事な「ルイ・カレ邸」など、優れたデザインと数々の名建築を生み出したフィンランドの建築家アルヴァ・アアルト(1898-1976年)。そんな彼のデザイナーとしての人生を突き動かしたのは、一人の女性だった……!!
この映画の監督であるフィンランドの新鋭ヴィルピ・スータリは、「アアルトが幼少期に設計した図書館で過ごし、その建築に魅了された」と語る。アアルトの最初の妻であるアイノとの手紙のやりとり、彼と同世代の建築家や友人たちの証言などを組み合わせ、アアルトの知られざる一面を生き生きと描き出している。
アアルヴァ・アアルトは、彼のデザインが特定の人々に向けたものではなく、デザインの力で誰もが豊かな生活を送れるよう願っていた。彼の作品は、自然との調和、素材の巧妙な利用、独自のデザイン哲学が特徴であり、多くの建築家やデザイナーに影響を与えた。この映画ではまず、アアルトがどのようにして建築界に革新をもたらしたのか、彼の作品に込められた思想と情熱を追求している。
一方、アイノ・アアルトも独自のデザインの才能を発揮し、家具デザインや照明デザインなど、多岐にわたる分野で成功を収めた。彼女の作品は今日でも広く愛されており、その代表的な作品である「ボルゲブリック/ アイノ・アアルト グラス」などは現在においても高く評価されている。アイノの存在は、ジェンダーの枠組みに挑戦し、女性がデザイン業界で成功できることを示した。この映画は、アイノの重要性と彼女の功績にも焦点を当てている。
そして、『アアルト』は、アルヴァとアイノの関係にも深く迫る。彼らのパートナーシップは、プライベートとプロフェッショナルの境界を曖昧にし、お互いの創造性を高めた。彼らの愛と協力の物語は、建築とデザインに情熱を持つだけでなく、人間関係やパートナーシップに興味を持つ観客にも心温まるメッセージを届ける。
映像は、フィンランドの美しい自然環境や四季を壮大な背景として活用し、アアルト夫妻による自然と彼らの作品との調和を鮮やかに表現している。それは主張しすぎない美しさであり、ただそこに存在するだけで心に富み、日常が彩られるものだ。
人と環境に優しいデザインが、どのようにして生まれたのか、その物語は建築やデザインに興味を持つだけでなく、人間関係や情熱についての普遍的なメッセージを伝え、観客の心に深い感銘を与えることだろう。
本年2023年は、アルヴァ・アアルトの生誕125周年を迎える年。アルテックの家具やイッタラのアイテムなど、後世に残る名作の誕生秘話も必見だ。
■監督:ヴィルピ・スータリ(Virpi Suutari)
■出演:アルヴァ・アアルト、アイノ・アアルト 他
■日本語字幕:横井和子 字幕監修:宇井久仁子
■配給:ドマ 宣伝:VALERIA
■後援:フィンランド大使館、フィンランドセンター、公益社団法人日本建築家協会
■協力:アルテック、イッタラ
■2020年/フィンランド/103分/(C)Aalto Family (C)FI 2020 - Euphoria Film